6月28日、東京国立競技場で第60回早慶サッカー定期戦が開催された。試合は3─0で慶大が快勝。7年ぶりの悲願を成し遂げた。試合後慶大は選手、スタッフ、観客ともに歓喜の渦に包まれ、勝利の美酒に酔いしれた。
 (丸山康平)

後半2点目を流し込む主将中川靖
後半2点目を流し込む主将中川靖

 慶大はユニバーシアード日本代表に選出された10番中町を欠き、厳しい戦いが予想された。しかし、先にペースを掴んだのは慶大だった。MF河井とMF中川靖を中心とした細かいパス回しと前線からの激しいプレッシャーで早大を翻弄していく。しかし、なかなか決定機が作れない。逆に早大はMF松本の個人技を中心としたカウンターサッカーで徐々にリズムを掴み始める。結局、前半は両チームともゴール前での精度を欠き、0―0で終了した。
 膠着していた試合は後半開始早々に動いた。後半1分、慶大はペナルティーエリア右でFKを得る。河井が上げたクロスは左へ流れるが、その折り返しをDF田中がヘディングでゴールへ叩き込み、先制点を挙げる。
 さらに慶大は攻撃の手を緩めず、後半13分、左サイドで黄と河井の連携から出たパスを中央で受けた中川靖が、強引にペナルティーエリア内を突破し、GKとの1対1を冷静に右へ流し込み追加点を挙げた。主将のゴールに慶大サイドの勢いは最高潮に達する。
 しかし、慶大にも守備の面でほころびが見え始める。後半23分、慶大のクリアミスから早大奥井にシュートを打たれるがクロスバーに助けられる。気の緩みが見えかけた慶大DF陣は声を掛け合い集中力を高める。
 早大に傾きかけた流れを引き戻したのは、中町の穴を埋めるべく先発に抜擢された1年生藤田だった。右サイドの河井からパスを受けた藤田は、中央を突破しゴールを決める。これが決定的なダメ押し点となり、その後も終始試合を優位に進めた慶大は7年振りの勝利を収めた。
 試合後慶大の李監督は「素晴らしいゲームで大変満足している。チームのMVPは、4年生全員だ。そして、嬉しい誤算だったのが1年の藤田。藤田は想像以上の働きを見せてくれて、後半戦のキープレイヤーとなるだろう」と興奮した表情で語った。早慶戦は「恩返しの舞台」と語り、それにゴールという最高の形で応えた主将の中川靖は「4年生にとっては最後の早慶戦であり、魂が乗り移ったと思う。自分のゴールが恩師への何よりの恩返しであり、それは自分のサッカー人生の努力が報われた瞬間だった」と熱く語った。なお中川靖は試合後、今大会最優秀選手に選出された。
 しかし、まだシーズンは前半の折り返し。李監督は「現状では上にも下にもどちらにも転んでしまう状況であるが、この勝利を糧に頑張っていきたい」と話し、中川靖は「まだまだやれることがたくさんある。またチャレンジャーとして頑張る」と気を引き締めていた。
 チームは前期リーグ終了現在4位。インカレの出場圏内に位置している。来年1月、国立競技場のピッチで、また彼らの勇姿が見られることを期待したい。