「意外と会話が弾まないし、話が途中で途切れてしまった」。
この1か月で、様々な出会いがあり、初対面の人と会話をする機会が増えただろう。それと同時に、もっと会話がうまければと感じた人もいるのではないか。
社会を見渡すと、話術を使って仕事をする人の存在に気づく。
例えば、銀座にある「クラブ由美」のオーナーママ、伊藤由美さんだ。18歳で単身上京し、23歳でオーナーとして「クラブ由美」を開店した。
「会話を弾ませる、途切れさせずに続ける、時間を忘れるくらい楽しいものにするためには、話す力やスキルは必ずしも必要ではない」と由美ママは言う。気持ち良く会話をするために不可欠なのは、話を「聞く力」である。
単に「聞く」といっても、「聞こえている」と「聞いている」とでは意味が異なる。前者はただ耳に音が入ってきているだけだが、後者では相手に意識が向いているため「理解」することができる。聞く上での謙虚さが必要なのだ。
会話において、自分が「聞いている」状態は、相手主体の状態と同じだ。ただし、話の全てが相手主体であれば良いのではなく、「相手8:自分2」が適切であるという。自分は「2」で、残りは相手に話してもらえば良いと思えば、気持ちも少し楽になるかもしれない。
では、「2」の時間は何を意識して話せば良いだろうか。初対面の人と会話をする場合は暗い雰囲気にしないこと、複数人いれば全員が話せるテーマを設定することが大切だ。
相手の話を聞いている「8」の時間と自分の「2」の時間、つまり会話全体の中で、相手を大切にすることにより、うまく会話を続けられるのである。
初対面の人に好印象を与えるには「名前を呼ぶ」方法も効果的だ。これも相手を大切にする表現の一つで、互いの距離を縮められる。
話題作りをする意味では、勉強も必要となる。話を「聞いている」時に、相手が何に興味を持っているかが分かれば、次回までにその内容を少し勉強して行くだけで、会話が楽しくなるだろう。
初対面の場ではもちろん、日常会話で特に注意すべきことがあるという。それは「言葉遣い」である。
由美ママは、「言葉は心の鏡。相手を気遣った品のある言葉遣いをしてほしい。言葉遣いには、言葉を使う人の品格やセンス、人としての温かさが表れてくる」と言葉の重要性を語った。
言葉遣いは、相手への心配りであり、敬意でもある。あの人ともっと話したいと思ってもらうためにも、言葉の品格を身に着けておきたい。
話術を用いた仕事をする「銀座の超一流クラブ」のオーナーは、常に相手を思いやる気持ちや気遣う気持ちを会話に求める。由美ママは、人のためにどれだけの時間とお金を割くことができるかも、思いやりの心の一つだという。
人を思いやることは、人を大切にすることと同じで、人を大切にすると、人から大切にされる。それが自分を大切にすることにつながる。
銀座のママが教えてくれた「会話ベタ」で損をしないための話術を使い、コミュニケーションを楽しんでもらいたい。
伊藤由美さん
1983年「クラブ由美」を開店。銀座の❝超一流クラブ❞として政治家や財界人などVIPたちからの絶大な支持を得て現在に至る。近著に「銀座のママが教えてくれる『会話上手』になれる本』など6冊の著書に加え、TVやマスコミにも度々登場!6月より『正論』で連載開始!http://yumi-ito.com
(桐原龍哉)