「テレビ離れ」と言われて久しい今日、相反して台頭してきたのがインターネット番組だ。

人気の理由として大きいのが、放送コードやつくりが地上波より緩いことだ。コンプライアンスの問題など規制の多い今のテレビに不満を持つ人は少なくない。宣伝文句には「地上波では放送できない」というフレーズが踊る。

28年前、芸人・上岡龍太郎は「テレビが全てだと思い詰めて、この四角い箱に全意見を投入してしまうとテレビが面白くなくなる」と生放送番組で訴えた。大衆メディアとしての性格を持ったテレビは様々な制約を受ける宿命にあった。

近年、インターネットは自由な広場としての性質を失いつつある。「炎上」という現象は今や日常茶飯事だ。インターネット番組も例外ではない。大衆化するにつれ、次第に自らの道徳観を強要する人が増え、制約を再び作り上げていくだろう。欲望と制約のジレンマは、再び訪れる。

毒舌と小難しい屁理屈が売りだった上岡龍太郎は「僕の芸は21世紀には通用しない」と言い残し2000年に引退した。「大衆うけ」など存在しない21世紀には、番組に全ての意見を反映させるなど通用しないのではないだろうか。

(山本啓太)