華やかで、一瞬で注目を集めることができるダンス。ミュージカルやテーマパークのショーにおいても、ダンスは欠かせないものとなっている。

ユニバーサルスタジオジャパンや劇団四季で活躍した経験を持つダンサーの星潤さんは、「ダンスはとにかくドラマチック」と話す。言葉を用いないダンスだからこそ、伝わるドラマがある。
文章で表わすとしたら数行で伝えられる概念を、ダンスはセリフを使わないで何分もかけて身体全体で表現する。あえて喋らないことで、表現したいことの濃度が増すのだという。

また、言葉では表現できないこと、例えば感情といった抽象的なものや、動物の動きなども、ダンスだったら振り付けに置き換えて表現することができる。それだけでなく、同時に人間の身体の神秘性や美しさも感じ取れるのがダンスの魅力だ。

ミュージカルやテーマパークのショーで見られるダンスは、単体としてのダンスとは異なる目的も持ち合わせる。「ダンスは目的を達成するための手段の一つ」と星さんは語る。

ミュージカルにおける第一の目的はストーリーを表現すること。ダンサーはただ踊るだけではなく、自分が演じる役割のバックボーンまで細かく決めて踊る。振り付けの一つ一つに具体的な意味があるのも特徴だ。

ミュージカルでは、ダンサーはダンサーとして輝くことが必ずしもベストではない。そのダンスが作品をよく表現できているかどうかの方が重要だ。実際に、時には振り付けよりも世界観や衣装の方が重要視されることもあるという。

「非日常」を作り出すことも、ダンス目的の一つだ。ゲストがテーマパークに求めるものは非日常の空間。そこで、ダンサーは常に笑顔でいることや、踊るという「手段」を通して非日常を表現する。

ミュージカルの観客として鑑賞する時は、何を意識したら良いのだろうか。星さんは、「まず何よりも作品、そしてストーリーを楽しんでほしい」と話す。ミュージカルにおけるダンスは、登場人物の感情の高まりを表すもの。ストーリーの流れの一部として自然に楽しんでもらえるのが理想であると彼は語る。

「最近になって、ミュージカルが持つ魅力や可能性が注目され始めている」と星さん。ダンスが果たす役割を理解したうえで見ると、より一層鑑賞が刺激的なものになるかもしれない。

(福永恵理佳)