弓を引き、矢を放ち、矢の当たった場所によって点数を決める。その際、風の強さの計算なども瞬時に行うアーチェリーは、極限の集中力を求められる競技である。

武藤弘樹選手(環3)がアーチェリーを始めたのは、中学1年生のとき。何か新しい競技を始めたいと思い、洋弓部に入部した。その後も競技を続け、慶大洋弓部に所属する現在では、日本代表としてアジア大会にも出場する日本アーチェリー界のエースである。
武藤選手はこれまでの自分を振り返り、「的に当てたい、勝ちたいという気持ちが強すぎて、空回りしていた」と話す。

そんな武藤選手にとって、今年8月のアジア大会出場は、大きなターニングポイントになった。この大会ではいつも以上に緊張し、自分の力を出し切ることができなかった。しかし、これを教訓として普段の練習に変化が生まれた。

「気持ちの浮き沈みをなくし、どんな時も同じ弓が打てる精神力を持ちたい」。そう思った武藤選手は、あえて難しい課題を自分に課し、一つずつ達成することで自信をつける練習を始めた。気持ちと弓の一定性も大切にした。今年のワールドカップ団体戦銀メダル獲得による自信も、その変化を後押ししたという。自信がつくことで焦りが減り、落ち着いて弓を引けるようになった。

最後に、現在の目標を尋ねると『東京オリンピックへの出場』を掲げた。「今までオリンピックに出場することは難しいのではないかと思っていた。しかし、ワールドカップで、結果を残すことへの喜びを知った。次はぜひオリンピックで自分を試してみたい」と力強く語った。

(陣内望)