「好きなことはなんですか」。こう問われたとき、即座に答えることができる人はどのくらいいるのだろう。私は答えに戸惑う。

「あきらめたらそこで試合終了だよ」の名言を生んだ漫画『スラムダンク』には数々の名シーンが存在する。日本の高校バスケ界のトップに君臨していた山王工業とのクライマックス。今後の選手生命が危ぶまれるような大きなけがを背中に負った桜木花道が、思いを寄せていた晴子さんに向かって「(バスケットが)大好きです」と告白した。彼はその後、選手生命をかけ試合に臨んだ。

スマホの普及が進んだ現代。私たちは様々な情報を簡単に入手することができる。その一方で、興味関心は散漫になりがちだ。熱中してもすぐに飽きてしまい、別のものへと目移りする。

あらゆるものに囲まれて目移りばかりしていては、本当に自分が「好き」なものがわからなくなってくる。何に対しても中途半端なのだ。

桜木花道は、自分の選手生命をかけてでも守りたい「好き」があった。その思いが湘北を勝利へと導き、彼自身も大きく成長した。

何に変えてでも守りたいと思える「好き」を見つけたとき、私も桜木花道のように強くなれるだろうか。

(鈴木里実)