6月22日から28日まで行われた第49回関東大学バスケットボール新人戦、慶大は予てから主力の3、4年生をバックアップする人材の育成が課題となっており、公式戦の出場が少ない1、2年生にとっては試合でアピールする絶好の機会だったのだが、結果として8位、大きな課題を露呈することとなってしまった。

初戦は東京経済大に96-86で勝利し、2回戦も112-106で東洋大を下し準々決勝に進んだ。しかし、どちらの試合も快勝とはいえない展開であった。準々決勝からは3連敗と悔しい結果となった。

初戦:vs東京経済大 ○96-86
2回戦:vs東洋大 ○112-106
準々決勝:vs日大 ●83-105
5~8位決定戦:vs白鴎大 ●72-83
7位決定戦:vs国士館大 ●100-109

「バックアップの発掘」というテーマ

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『日替わりキャプテン』の中で比較的評価の高かった♯15家治

今回の新人戦に関しては、やはり「バックアップの発掘」ということがテーマであった。さらに、佐々木ヘッドコーチ(HC)にはこの大会で主役となった2年生の2年後を想定してのプランもあったようだ。

「将来的に言うと、これは我々の感想だけど松谷とか金子とか家治とかそういう人が4年になった時に主将としてチームを引っ張っていかなきゃいけないので、その適性が本当にあるのかをチャンスとして与えています。例年だと、去年は二ノ宮とか固定してやったんだけど、2年生がなんとなくわからないので持ち回りで。キャプテンは松谷、ゲームキャプテンは日替わりでやって頑張りをみようと」(佐々木HC)

『日替わりゲームキャプテン』の中では「他の子よりは大人かな」と5~8位決定戦、白鴎大戦でゲームキャプテンを務めた♯15家治(2年・清風南海)の評価は比較的高かった。
しかし、同時に「ただ、決定力がないのが残念」と課題も挙げられた。
♯15家治本人も新人戦を通して決定力のなさという問題点を意識していたのかもしれない。♯15家治は、白鴎大との試合後、ゲームキャプテンを務めたことについて、以下のように語った。
「この新人戦通して苦しい時に声をかけたり、積極的に声を出したりってことはしたんですけど、今日は流れが悪くなった時に、声がかけきれなかったっていうか、その流れを止めきれなかったっていうのが、僕の力量不足です」

求められるものは“リーダーとしての気概”

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キャプテンを務めた♯4松谷

秋リーグでの1、2年生については「秋は使いません。今はその資格はない」と佐々木HCは言い切った。正直、5試合を通して観衆を唸らせるようなシーンは見受けられず、ふがいなさが残る試合展開であったことは確かだ。今は、3、4年生が何とかやってくれるという意識が少なからず彼らにはあり、その意識がプレイにも出てしまっていたのではないだろうか。この5試合を振り返っての課題として佐々木HCは、次のように話した。

「誰かが必死に声を出すとか、そういう人いないじゃない。例えば、田上(主将・環4、筑紫丘高)みたいにリング下で粘って、何とかやってくれる。結果が出なくてもファウルをとるとか、ミスをした後に次の何かをがんばるとか、そういう抑揚というか、そういうメリハリが自分でつけられるというのを期待しているんだけど、そういう子がまるでいない…リーダーシップというか、チームを引っ張っていくという気概がないんだよね」

『リーダーだから、何でも器用にこなせなきゃダメだ』といった意識からメリハリのあるプレイに繋がっていないのかもしれない。しかし、リーダーシップとして大事なのは、『自分が何とかしてなろう』という意気込みであり、一人一人がそういった意識を持つことで、チームのスローガンである『自立から勝利』へと繋がるのではないだろうか。
2年後、彼ら2年生がチームの中心になった時について佐々木HCは、「2年後にはインカレで勝てるようにやらせる。今やっている上級生のやり方が踏襲できるかどうか、そこですよ。どれくらい自分たちが変えられて、上級生がやっているような、頑張り方ができるかどうか。能力は近いと思うんだけど、自分の力を自分自身で分かってないのかもしれない」と分析している。

ガード、金子峻也の意地

ガードとしての意地を感じられた(♯9金��)
ガードとしての意地を感じられた(♯9金子)

「秋は使いません」という佐々木HCの言葉はあったが、大会において成長はあった。特にガードとしてコートに立つ♯9金子は5試合を通して得点王、3ポイント王に輝いた。♯9金子は自身を次のように振り返った。

「大会始まった1、2戦目は、『ガードがダメ、ガードがダメ』って、言われていて、それがすごく悔しくて、絶対この大会中に、『ガードがダメだった』って、最後に言わせないようにやってやろうと思っていました。試合を重ねていくごとに、プレイタイムも40分に近づいてきて、そういうのが自分にとって成長した部分だと思う。自分では全く満足してないし、全然これでいいやとは、全く思ってないですけど、とりあえず大会内でできた課題っていうか、悔しい思いをしっかり、大会内で晴らすことができたっていうのは、1つ収穫だったと思う」

日大戦では、シュートを決めても良いところでパスを出してしまうといった消極的なプレイが目立っていたが、その後の試合では外からのシュートなどを決め、得点から慶大の流れへと持っていこうとする積極的な姿勢がみられた。この2つの個人賞獲得は、悔しい思いが形となった結果だったのだろう。
秋のリーグ戦に向けては、「得点をとりに行こうっていうよりも、まずは短い時間でニノをちょっとでも休ませられるようにバックアップとしてやっていきたいと思います」と意気込んでいた 。

1、2年生にはまず、リーグ戦で主要5人(田上、小林、岩下、酒井、二ノ宮)のバックアップとしての活躍が期待される。もちろんサポートをするという気持ちも大事である。ただ、その上で金子が新人戦で片鱗を見せた積極的なプレイの背景にある“自分がやらなければ、得点を取りにいかなければ”という強い想いをもって挑んでほしい。2年後には二ノ宮(環3・京北高)に続くガードになることを期待してやまない。



文、写真 阪本梨紗子
取材 阪本梨紗子、湯浅寛、小柳響子、金武幸宏、井熊里木、三木麻未