企画展「明治150年記念 明治の夢二」が、竹久夢二美術館(東京都文京区)にて今月1日から9月24日まで開催されている。この企画展は明治時代に生まれた竹久夢二の、誕生からデビュー、人気挿絵画家となるまでに焦点を当てた初めての展示である。

竹久夢二は明治から大正にかけて活躍し、数多くの美人画を残した画家・詩人である。センチメンタルな画風の<夢二式美人画>で一世を風靡した彼は、大正ロマンの象徴として今もなお知られている。竹久夢二美術館は創設者・鹿野琢見の夢二コレクション約3300点を所蔵し、様々なテーマで3ヶ月ごとに企画展を行っている。今回の展示について、学芸員の中川さんは「明治150年をきっかけに、夢二の作品を明治という新しい視点で見てもらいたい」と語る。

展示では人気挿絵画家となるまでの夢二の道のりを時系列順に追うことができる。目を引くのは夢二と社会主義運動との関係だ。夢二は当時興隆しつつあった社会主義運動に傾倒し、社会主義運動家と交流を深めた。デビュー前には社会主義結社・平民社の機関紙『直言』に夢二のコマ絵が掲載され、このとき、はじめて夢二の絵が世に送り出された。

「コマ絵」とは新聞や雑誌に掲載された、周りの文章とは関係のない独立した絵のことである。薄葉紙に筆で線描した絵を彫師が木版に彫り、活字と一緒に組み合わせて印刷された。

明治38年、夢二は雑誌『中学世界』へコマ絵を投稿し、入賞する。これが夢二の職業画家としての出発点であった。その後、夢二は様々な新聞でコマ絵やスケッチを描いている。『法律新聞』では日比谷焼討事件についてのコマ絵を描くなど、夢二には大正ロマンのイメージとは違った、社会的な面があったことがわかる。

コマ絵のほか、口絵、絵はがき、雑誌の表紙などで20歳前後の若者に人気を得た夢二は『夢二画集』を明治42年に刊行。大ヒットした『夢二画集』はシリーズ化され、夢二の人気は確固たるものとなった。夢二の叙情的な画風は明治30年代、東京の学生の間で広まった「ローマンチック」、「センチメンタル」の気風によく合っていた。

夢二は女性にも絶大な人気を誇った。当時の写真は白黒だったため色を確認することができなかったが、絵はがきや雑誌の口絵はカラフルな多色刷りだった。当時の最先端のファッションを色鮮やかに描いた夢二の絵は現在のファッション誌のような役割を持っていた。大きなリボン、オリエンタル模様の着物。こうしたファッションは夢二の作品が発表されたのちに実際に女子学生の間で流行した。夢二は流行を忠実に描く一方で、新しい流行を創り出していたのだ。

中川さんは、「明治の富国強兵的な面だけではなく、夢二のような画家が出てくるほど多様性を持った時代だったということも知ってほしい」と語る。夢二の作品を見ていると、明治の人もそんなに遠い存在ではない気がしてくる。展示を見終わった後には、今まで抱いていた明治のイメージが少し変わっているはずだ。

(遠藤希)

明治150年記念 明治の夢二

2018年7月1日(日)~9月24日(月・祝)
会場:竹久夢二美術館(東京都文京区)
時間:10時~17時(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(7月16日(月・祝)、8月13日(月)、9月17日、9月24日(月・祝)は開館)、7月17日(火)、9月18日(火)
料金:一般900円 高校・大学生800円 小学・中学生400円