―新聞を読まない学生について、どう思われますか。
新聞は、基本的には、誰が読んでもわかるように書かれていますが、継続的に読んでいないと、時に難しく感じてしまうことがあるでしょう。それが新聞を毛嫌いする理由の一つかもしれません。でも大きな事件や出来事の時は、テレビとは違った角度で、背景説明、関連性などを詳細にわかりやすく解説するページも用意してあります。ですから、まず継続して手にとって欲しいと思います。学生はおそらく情報の洪水の中に飲み込まれていて、何が自分にとって重要な情報なのか迷っているのではないでしょうか。新聞は世の中で起こっていることの縮図で、社会のことを知るよい手段です。社会のことに興味をもつ意味でも、新聞というメディアの特性を知る意味でも、まず新聞を読んで欲しいですね。
―読売新聞には、毎週金曜日に「大学を歩く」という大学をテーマにした特集が連載されています。このように大学の情報を新聞にとりいれると、どのような効果があるのですか。
大学は社会に人材を送り出す高等教育機関です。学生、親だけでなく国民からも関心を持たれています。大学も情報公開し、社会との接点を持とうと努力していますが、その橋渡しをする狙いもあります。全国の大学を調査してまとめた「大学の実力」は、学力を含め、教育への取り組みを客観的に評価したものです。大学のあり方を考える機会になったと思います。
―インターネットメディアには負けない新聞独自の、情報提供能力とはなんでしょう。
新聞は、インターネットメディアに比べ、速報性に劣ってしまう面はありますが、現象の背景を抉った解説力、記録性には優れています。それから記者が深い取材を通じた、組織的な取材力も他のメディアにない強みです。さらに、ニュースの軽重をつけたレイアウト、一覧性は、思考の材料となると思います。
―新聞は「考えさせる」機能に特化しているということですか。
もちろんニュースの速報性にも力を入れていますが、社会の現象を伝え、国民で考えてもらおうという視点を大切にしていることは確かです。大学生の場合、特に活字を読まない人には、最初はとっつきにくいですが、継続して読むことで、自分の意見を形成することに繋がります。それから、メディアの人間がいうのはおかしいのですが、情報をうのみせずに、一度は疑い、批評する目を持つことも大切です、新聞によっても主張は異なります。世の中にはさまざま意見があること、違う意見を持つ人も尊重することを学んで欲しいですね。
―これから学生は新聞とどう向き合っていくべきだと思われますか。
まずは、図書館でもけっこうですから、紙面を開いてください。そして興味あることを継続的に読むと同時に、興味のない分野にも目を通していってほしいですね。興味のない分野への視点が、あるとき自分の関心、専門分野と密接に関連していることに気づくときがあります。日ごろから一見価値がないと思われるニュースでも、読む経験を蓄積させていけば、必ずこれからに生きていくはずです。
(佐々木真世)