「コミュニケーションが苦手だった。だから理系に進み、大学ではロボットの研究をした。人と関わらない方が快適だったからだ」。そう語るのは、シリーズ100万部を突破した「伝え方が9割」の著者、佐々木圭一さんだ。効果的な「伝え方」を指南する佐々木さんは、「コミュ障」だったという。
そんな佐々木さんの一つ目の転機は、広告代理店に就職したことだ。もっと人と関わらなければならないと感じての選択だったものの、当時は良いコピーが全く書けず、すべてボツにされた。
しかし、佐々木さんに二つ目の大きな転機が訪れた。「伝え方には、技術がある」とひらめいたのだ。
例えば、人は1日に約22回のお願いをするが、その際により多くのイエスをもらうためには、七つの切り口があるという。今回は、その中の二つを取り上げる。
まず、「相手の好きなことを提案する」ということだ。例えば、デートに誘う際に、「デートに行きませんか」ではなく、「驚くほどおいしいパスタどう?」と聞く。先に相手の好きなものを知っておく必要があるが、好きなものを提案されると受け入れられやすいのだろう。
同様に「嫌いなことを避ける」ことも重要だ。「芝生に入らないで下さい」ではなく、「芝生に入ると農薬の臭いが付きますよ」と伝えることで、命令口調ではなくなり、相手も素直に行動しやすくなるだろう。
このように、人に何かを伝える際には、「相手のことをどれだけ想像・理解できるか」が重要であることがわかる。
一方で、相手のことを考えるあまり、伝えたくても伝えられないこともある。佐々木さんは、「伝えるべきことは、必ず伝える。でも、思ったことをそのまま言葉にしてはいけない。伝え方で印象は変わる」とエールを送るように語った。
人に伝える言葉は、相手に対する愛情やリスペクトが現れるようだ。ゆえに、コミュニケーション能力が欠けていることを、「センスがないから、しょうがない」という一言で片付けてしまうことはもったいない。まずは、相手を想うことから始めてみよう。実は、コミュニケーションは言葉を発する前から始まっているのだ。
(仮屋利彩)
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