12月20日、多くの塾生や地元の人々から愛されてきた「喫茶まりも 日吉店」が閉店し、38年以上の歴史に幕を閉じた。
日吉駅を出て右に進み、サンロードを少し歩いたところに、一軒の喫茶店が立っていた。店内は常にゆったりとした雰囲気に包まれており、そのような空間を求めて多くの人が足を運んだ。
まりものオーナーである加藤政義さんによると、加藤さんは御年71歳で2人の娘も結婚したことから、「元気なうちに店を閉めよう」と閉店を決断したという。まりもは新丸子にも店を構えており、そちらは今後も営業する。
もともと米屋を営んでいた加藤さんが心機一転、日吉に喫茶店をオープンしたのは、今から38年以上前のこと。当時、日吉駅西口側(通称ひようら)にはレストランがほぼなかったため、喫茶店は常に満員であったという。夏休み中にオープンしたまりもは、当初あまり客足が伸びなかったが、学校が始まるやいなや一気に繁盛したと、加藤さんは振り返る。
やがて、ひようらにどんどん飲食店が増え、駅ビルも完成するなど、日吉の街は時代の変化と共に発展しながら今に至っている。まりももまた、時代の変化と共に立ち位置を変えながら、現在まで営業してきた。「長い間営業していると、売上にも必ず波が現れるんですよね。苦しい時期もあるけれども、続けていればいつの間にか、お客さんは戻ってきてくれる、ということを実感しました」
まりもが開店してから数年間は好景気が続いたが、やがてバブルが崩壊し、日本は一気に不況に陥る。それに伴って、まりもの売上も急減したが、21世紀に入って少しずつ回復していった。7年前には全席禁煙化を行い、再び売上は減少したが、今では客足を取り戻し禁煙化前以上だという。
加藤さんは、38年以上の歴史において、禁煙化の実施は大きなターニングポイントだったと話す。「昔は、タバコを吸いながら利用する人がほぼ全員と言っても過言ではなく、店内には常に煙が充満していました。当時は禁煙化なんて考えもしないし、ありえないでしょう」。一方で、今は時代の流れを考えれば禁煙化は当たり前だという。「今では、『タバコは良くないもの』という考えが広がっていますからね。子連れのお客さんが来るなど、昔では考えられなかったです」
まりもは普段の営業以外に、塾生たちとどのように関わってきたのだろうか。様々なサークルが、活動場所や打ち上げの場所としてまりもを貸し切りで利用したり、早慶戦のチケット販売を委託され、店頭で行ったりするなど、様々な関わりがあったと加藤さんは語る。「まりも用の部誌を常に置いていたサークルもありました。サークルごとにそれぞれの形で、まりもを利用してくれたと思います」
閉店するにあたって加藤さんは、まりもがいろいろな人から愛されていた、ということを痛感しているという。「閉店することを知ったOBの方々から、様々な手紙をいただきました。多くの人からメッセージもいただきました。いざ閉店する、となって初めて気づくこともありますね」と語る。
最後に、加藤さんは日吉に通う塾生に対してメッセージを語ってくれた。「私自身は、『慶大あっての日吉の街である』と考えています。塾生一人ひとりと日吉の人々が互いを愛し合って、協力を深めながら街を発展させていってほしいですね」
まりもが与え続けた温かみは、いつまでも人々の心の中に、優しく、残り続ける。
(松岡秀俊)