慶大医学部精神・神経科学教室の内田裕之専任講師をはじめとした国際専門家らによる「統合失調症」研究の成果が5月5日、アメリカ精神医学会発行「American Journal of Psychiatry」に掲載された。
 
100人に1人の割合で発症する統合失調症の症状には、うつや不安障害、幻覚の発生、認知機能の低下がある。主な原因は、脳神経の興奮を伝達する神経伝達物質「ドーパミン」の過剰発生にあると考えられている。治療に必要な「抗精神病薬」は、ドーパミンの受容をシャットアウトする役割を持つが、長期的に使用すると逆に症状が悪化するという報告が多く見られ、欧米メディアを中心に扇動的な報道がなされていた。
 
しかし今回、内田講師をはじめとした北米・アジア・ヨーロッパの研究者らが治療薬の有用性を再検証した。さらに、脳に対する長期的影響の解明や、個人に合った治療法の探索を今後の課題点として提示し、地域毎にプレスリリースを発信した。患者に正しい治療のルールが伝わる契機になると同時に、行政機関などに正しい知識の伝達を促すアピールとなった。
 
国や社会が一丸となって患者を救うには、現段階における正しい情報の拡散が重要である。「今回の研究のように、医師同士の連携によって医学的知見が世間に示されることは、既存のマスメディアによらない直接的な情報発信が可能となった現代の強みであり、今後は患者同士の連携も取りやすくなるだろう」と内田講師は語った。