株式会社タカラトミーが1967年から発売している着せ替え人形「リカちゃん」が、今年で50周年を迎える。「リカちゃん」はこれまで、「ごっこ遊び」や「おしゃれ遊び」を楽しむことができるおもちゃとして、長年にわたって少女たちに愛され続けてきた。「リカちゃん」がこれほどまで親しまれてきたのはなぜだろうか。「リカちゃん」の商品開発を担当している木下歩さん(株式会社タカラトミー)に話を聞いた。
「リカちゃん」の大ヒットの裏には、開発者の努力がある。開発において心がけていることは、その時代の目線に立って商品企画とマーケティングを行うことだ。そのために、「子ども調査」と「市場調査」という手法を用いている。「子ども調査」では、子どもたちに試作品で実際に遊んでもらい、ヒアリングを行う。子どもたちの試作品に対する素直な反応を確認することで、常に子どもたちのニーズに合わせた商品を提供することができる。「市場調査」では、世間で流行しているものを直接体感するために、街中に足を運ぶ。流行はSNSでも調査することができるが、そのような手法に加えて、写真だけでは伝わらない流行を自分の目で捉えることが商品開発の構想に役立つという。
時代や流行を反映した商品を展開することを目的に、「子ども調査」や「市場調査」を行っているが、時に困難に直面するという。それは、流行が一過性であるためだ。商品開発は、通常、1年ほどかけて行われているが、商品の構想から発売までの間で、世間の流行は目まぐるしく変化する。流行のスピード感に対応するために、開発会議では常に情報を共有することを怠らない。
「リカちゃんは、女の子の憧れと夢を体現している」と、木下さんは言う。そのためには、「リカちゃん」が、女の子にとって身近な存在であることが求められる。そこで、企業や学校などとコラボした商品も開発されてきた。慶大においても昨年、連合三田会の記念品で、應援指導部チアリーディング部のコスチュームを着た、「メジャレッツKEIOリカちゃん」が販売されている。
「リカちゃん」がこれまで、日本社会において果たしてきた役割は大きい。「ごっこ遊び」を通じて、他者とのつながりや社会の基本的なルールを理解し、「リカちゃん」が憧れや夢を体現することで、子どもたちが自分の将来像を獲得するための手助けをしている。
最後に、木下さんに今後の展望を尋ねると、「これまでに培ってきたものを過信せず、これからも丁寧に商品開発を行っていきたい」と語ってくれた。
将来、私たちの子どもや孫が「リカちゃん」で遊んでいる姿を想像するとわくわくする。「リカちゃん」の今後が楽しみだ。
(鵜戸真菜子)