ありとあらゆる情報が氾濫している現代社会。文学部社会学専攻の李光鎬教授は、SNSなどのソーシャルメディアが、情報の受容および発信において重要な役割をもつと語る。SNSの拡散機能のなかでも代表的なTwitterの「リツイート」、Facebookの「シェア」などが用いられ、あらゆる情報が人々の間に広まっている。
 
SNS上で拡散される情報の多くは、ある特徴をもっていると李教授は指摘する。それは、利用者の「フォロワー」や「友達」がすでに興味関心をもっている情報であるということだ。情報の投稿、拡散、受容というプロセスは、いわば人間関係のフィルターが媒介しているのである。その結果、タイムラインには、自分の興味と似たような情報、もしくは既知の情報ばかりが溢れているのだ。
 
また、自分の意見やそれに似た情報を投稿し「いいね」を押してもらうことで、「誰かに認めてほしい」という承認欲求が満たされる。さらに、「私はこんな情報に興味を持っている人間です」という周囲へのアピールにもなり、アイデンティティの確立につながっている。
 
このように、ソーシャルメディアという空間は、人間の欲求が満ち満ちた、一定の傾向を持つ歪んだ空間であると李教授は語る。歪みのある空間であることに加えて、情報量が尋常ではない。人は情報の内容ははっきり覚えていても、その出どころはうやむやになることが多いため、SNSにおいては「本当に信頼できるのか」という一歩引いた視点が持たれにくくなる。その結果、なんの疑いもないまま多くの人が情報を拡散し、デマが広まってしまうということもしばしば起こるのである。
 
情報を受容、発信する上で、われわれが意識すべきことはなにか。李教授は注意すべきポイントを3点挙げる。まずは、自分と同質の情報に甘んじるのではなく、幅広い内容の情報に触れ、多角的な視点を養うこと。そして、情報源の信憑性について敏感になること。それは、受け取る情報そのものの信憑性を確かめる上でも重要である。最後に、あらゆる情報を鵜呑みにせず批判的な目で向き合うこと。このような姿勢は、価値観が多様化し、正解がひとつに決まらないことばかりの現代社会において非常に大切だ。情報との付き合い方というスキルは、4年間の大学生活において、身につける価値があるものであろう。
(下村文乃)