今を生きる学生は、「やわらかい」生き物である。我々が一年間の連載を通して発見したことだ。

新しいもの、革新的な考え方も柔軟に取り入れることができる。過去やルールに縛られることはない。人やものに対する粘着性が弱い。「いいね!」と思ったら素直に受け入れ同調するが、ほかに良いものが見つかれば、それも永遠ではない。

この時代を説明するとき、「多様化」という言葉がしばしば使われる。技術が格段に上がり、道具が増えた。遊び方も増えた。人と違う考え方を主張する舞台も整った。学生たちが大人と違うのは、その多様化を、既成概念に囚われることなく受け入れ消化し、自分のものにすることができる柔軟性だ。人間を一概に説明することは難しいが、学生たちに共通するスタンスは、やわらかい。

スマートフォンを電話として使うだけでなく、写真を撮ったり音楽を聴いたりと生活の一部にした。高級料亭に行かなくても、数百円のカフェのドリンクで旬を味わうことができる。食べたものをSNSで友達と共有する楽しみも見つけた。

価値観が変化すれば、付き合う人も変化する。自分と似た価値観の人を探しては「いつメン」を作る。なるべく「浮かない」服を着る。他人からどう見られているのか常に気にして、カメレオンのように周りと同化する。一方で人との関わりに疲れて一人で焼肉を食べるときもある。

性別の壁を軽々と飛び越えた。ひとつひとつの恋愛に慎重で、容姿の麗しさを大切にする男子は、メイクに勤しむ女子に劣らぬ輝きを放っている。中でも慶大生は特に恋愛を楽しんでいた。「肉食」女子の数が男子を上回った。男女の「あるべき」姿は壊され、新しい恋愛観が受け入れられていた。

世の中ではさまざまな「多様化」が先立ち、大人たちの頭が追いついていないように感じる。きっとこれからは「やわらかい」学生たちが、難しい時代を軽々と乗り越え、先頭を走っていくのだろう。

学生たちは、実に面白い生き物であった。塾生新聞はこれからも、時代を深読みしていく。
(平沼絵美)

【連載】学生文化研究所