「出身地鑑定!!方言チャート」というものをご存じだろうか。これは方言に関する二択の質問に何問か答えるだけで、その人の出身都道府県が分かるというチャートだ。この方言チャートの正確さが、ネット上で話題になっている。方言チャートを作成した、東京女子大学の篠崎晃一教授に話を聞いた。
現在累計ユーザー数が1000万人を超える方言チャート。チャートを作った目的は、研究調査への協力者に対し、できるだけ面白い形でデータを還元するためであった。
方言チャートには、様々な工夫がなされている。方言の区分は現在の都道府県単位ではなく、江戸時代の旧藩や旧国名によってなされていることが多い。そのため、質問をうまく重ねることによって、方言による言語圏の区画と現在の行政区画を組み合わせて出身都道府県を導き出している。さらに、本来予想される答えとは違うものを選んでしまった場合を想定して、正しく特定し直すための質問や予防線も設けている。また、結果が外れてしまった人には正しい出身地を記入してもらい、どこでずれてしまったのかを分析して、チャートの改訂版を作っている。
以前、方言は一種のコンプレックスのように受け止められてきた。しかし、近年は方言の価値が変容しつつあり、現在では方言がブランド化してきている。その例が、宮崎県小林市の地域PR動画だ。この動画では、フランス人と思しき男性が小林市の風景を地域の方言によるナレーションと字幕とともに紹介する。標準語とアクセントが異なる流暢な西諸弁は、視聴者にフランス語を錯覚させる。このように、方言を全面的に押し出してPRに成功した地域もある。方言は、地域をアピールする有効な手段になっているのだ。
「地方創生」という言葉があるように、今、社会が地方に注目を向けている。「地域の魅力を発信する有効な手段である方言に若者が関心を持って、地域おこしの基盤を担ってもらいたい」と篠崎教授は語る。方言チャートは、若者の関心を方言に向けただけでなく、地方活性化にも大きく貢献しているのだ。
(川津徹朗)
【特集】今、見つめる「ことば」