合流場所は指定したものの、相手の顔を知らない。「オーラで分かるのでは?」と付き添いのベテランに言うと、彼は曖昧な表情を返してきた。ごめん。
まあしかし、分かったのだ。多くの学生が行き交う中、テーブルにもたれ、新聞にアンニュイな視線を落とす女性がいた。
声をかけると、はっと彼女は顔を上げた。中島百合香さん。控えめにウェーブがかかった暗髪と真っ直ぐな瞳を見て、芯の強い人だ、と直感した。
写真撮影はコンクリ調のバルコニーで行った。寒露も近いのに日差しが厳しい。移り気な風に髪をなびかせ、彼女は語る。
「運転が大好きなんです」
時間を見つけては気の向くままに車を走らせる。レンタカー屋でバイトを始めて以来ぐんぐんドライブにのめり込み、今や遠征もお手の物だ。最近は静岡、その前はハワイ。チャンスがあれば国際免許も手に入れたいらしい。
食べることも好きだという。最近は激辛料理を求めて上海を訪れた。
―で、どうでした?
「割といけました」
彼女はにこり、否、にやりと笑みを浮かべた。
―他に海外で印象に残った食べ物はありますか?
「高校生のときカンボジアに行ったんですけど」
―はい
「タランチュラの素揚げが」
―……ん?
「『うーん……』って感じでした」
パリパリしてましたよ、と彼女は言い添える。決して味を褒めようとしないのが気になったが、本人は嬉しそうだ。総じて、好きなことを語る彼女は快活そのものである。
残り取材時間5分。最後にアレ、いってみよう。
―理想の男性像は?
「まず見た目ですけど、垂れ目に吊り眉、背は低めが良いですね。生田斗真さんみたいな」
―(これ記事に書いたら皆鏡見るんだろうなあ)
「性格は、頭の狂っ」
―もうちょっとソフトに
「あー……常軌を逸した発想力、面白さを持っている人が好きです」
フツーの人ではつまらない。世界の彩りを知る彼女を満足させるのは至難の業だろう。
今はできる限り旅行をしたいという。西へ東へ、海の向こうへ。アクティブ&フリーダムな彼女の旅はまだまだ続く。
(暴れまわるパワポマスター)
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撮影・岩崎有沙