近年、ドローンに対する注目が高まっている。その中で、慶大にドローンを使った競技であるドローンレースの世界大会に出場した経験を持つ塾生がいる。高宮悠太郎さん(環4)だ。
ドローンレースでは、決められたコースをドローンが完走するまでのタイムを競う。レースに用いるのは、レース用の小型ドローンだ。一般的なドローンとは違い、カーボンの板を切り出しただけのシンプルなものである。操縦者は特殊なゴーグルを目に装着しレースに臨む。ゴーグルには機体に搭載された小型カメラの映像が映る。操縦者はコースを飛ぶドローンを直接見るのではなく、ゴーグルに映る映像を見てレースを行う。
ドローンレースの歴史はまだ浅い。「2016年はドローンレース元年」と高宮さんは話す。昨年、ドローンレースの国際的な運営団体が発足したばかりだ。高宮さんは今年3月、ドバイで行われた「World Drone Prix」に日本代表として出場した。この大会は世界で初めて行われたグローバル規模のドローンレースイベントだ。賞金総額は約1億2000万円と大規模である。2月にSFCで日本選考会が行われ、高宮さんが世界大会への出場を決めた。
高宮さんがドローンレースを始めたのは昨年の春休みのことだ。それまでは、ドローンを飛ばして写真を撮ることを楽しんでいた。「男子は動くものがあったらレースを始める」。友人の佐藤賢史さん(環4)、小原章紀さん(環4)とドローンで遊んでいるとき、自然とレースが始まっていた。
ドローンレースの魅力に引き込まれた3人は、昨年、「慶應義塾大学Drone Race Team―KART」を結成した。普段はSFC内の空き地で練習している。日本のドローン飛行に対する規制は厳しい。アメリカなどでドローンの研究が活発に行われ、当初に比べるとドローンの操縦は簡単になったが、ドローンの飛行はエネルギーを要する。特にプロペラには大きな力が加わっており、人に当たると危険だ。そのような危険性から日本でのドローンに対する規制は緩むことがない。KARTの3人も、サークル結成当初、練習場所の確保に苦労した。慶大内での練習を許可してもらうために、何度も政府や大学に掛け合った。そしてようやく、SFCでの練習場所を確保することができた。現在、高宮さんたちは10月にハワイで行われる世界大会に向けて練習している。6月11日、12日には宮城県で日本選考会が開催される予定だ。
「今後、ドローンがさまざまな場所で活用される一方で、ドローンを使ったゲームが娯楽として広がってほしい」と高宮さんは話す。
河川敷で子供たちがドローンで遊ぶ日が来るのも、そう遠くはないかもしれない。
(鵜戸真菜子)