教養研究センター主催の「情報の教養学」春学期第1回講演が、4月19日、日吉キャンパス第6校舎で行われた。このシリーズでは塾内外から講師を招き、全6回の講演を行う。そのうち春学期はインターネット利用による「情報のリスク」に焦点を当て、3回の講演をする。今回は「メディアは世界をどう変えてきたか」という題で池上彰氏が登壇した。
ネットで様々な情報を送受信することができる現代では、同時に大きなリスクも負っている。例えば熊本地震が起きた際、SNSが救援に役立った一方で、地震に関する不用意な発信がネットを炎上させた。「ネットあるいはメディアというものは使い方次第だ」と池上氏は語る。
新たなメディアは世界の歴史を変えてきた。宗教改革が起こったのは、活版印刷というメディアが誕生したからだ。ラジオやテレビが人々に国家意識を与えたことや、逆に騒動を起こしたこともある。ベトナム戦争は、テレビ局が戦場の生々しい映像を流したことがきっかけで停戦につながった。去年の夏以降多くのシリア難民がヨーロッパへ移住しているが、その背景にはスマートフォンの普及やメディアが悲惨な写真を掲載したことの影響がある。
反対に、世界の歴史が変わることでメディアは発展してきた。もともとインターネットは東西冷戦に備えて開発されたものだ。皮肉であるが、メディアは戦争報道と共に発展してきたといえる。政治家の都合の良いようにたびたび利用されており、報道における客観性が常に保たれていたわけではない。
会場は満員で終始熱気にあふれており、質疑応答の末、大きな拍手で締めくくられた。