「どのチームも問題点を良く分析できており、その解決方法にも知恵が絞られていた」と審査員を務めたJICA職員が評価したのはInternational Development Youth Forum(IDYF)2016だ。世界30ヶ国以上から集まった若者が6チームに分かれてインドネシアのペカロンガン地方のバティック生産による環境破壊への解決策を考案し、発表した。優勝チームに選ばれた「グリーントマト」は問題の本質を現地の低い所得にあると考え、工場の廃水から金銭的価値を持つ化学物質を抽出する方法を紹介した。廃水を再利用することは環境破壊抑止への即時的な効果をもち、付随的に発生する所得向上によってエコ設備の整備が可能になり、これが根本的解決に繋がるとした。
IDYFとは、国際開発問題を取り上げ、それを克服する方法を先進国と途上国の若者が議論するフォーラムであり、2012年に設立された。世界中から参加者を募り、定員50人に対して今年は約3000人、昨年は約5000人の応募があった。
2016年度のIDYF共同代表を務める太田優人さん(政2)は国際開発分野の議論の実態について「実際の国際会議においては、援助国と被援助国の間に大きな発言力の差と利益の対立が存在する」と話す。
また、若者による会議が抱える問題点について、「若者だから将来思考で先進的なアイディアを生み出そうとするあまり、非現実的で実効性に欠けるものが沢山出てしまう」と指摘する。
IDYFはこうした問題意識に基づき、若者が国際開発問題について議論する場を与える団体として設立された。「所属に縛られない若者だからこそ、対等な立場で意見を共有できる」。若者の会議の弱みとされる議論の粗さを克服するために、専門家によるフィードバックを実施している。さらに今年からは「開発課題の現場で暮らす途上国の若者から会議テーマを募集し、選ばれた提案者のグループを会議に招待する形をとった」。今年を例にとると、「議論の対象とされたペカロンガン地方の若者が議論に参加することで、対象課題の一次情報に基づく革新的かつ実現可能な解決案を生み出すことができた」という。
また、IDYFは「単なる国際交流の場ではなく、将来のキャリアに直結するような専門性を伴う知的交流の場」として運営されている。
英語やアラビア語などの多様な言語での募集要項の作成やSNS上のマーケティングの努力が実を結び、設立して4年目であるが、「規模的には世界的に有名な会議になったのでは」と太田さんは語る。ユネスコが昨年日本で開催した「接続可能な開発のための教育(ESD)ユースコンファレンス」の応募者数が約5000人であったことを考えると、その注目度の高さは確かなのかもしれない。
(小林良輔)