「ラジオのある日常」――最近は「ラジオを聴く」という感覚のない大学生も多いようだが、皆さんは経験したことがあるだろうか。今回、首都圏のラジオ3局で塾員の現場担当者を取材した。ネットの浸透したこの社会で、ラジオに耳を傾けてみるのも良いかもしれない。
最初に取り上げるのは、AMの強豪、TBSラジオ。音質でFM放送に劣る為、AMは音楽よりトークに重点を置く傾向が強い。
TBSラジオは日中のリスナーの平均年齢が高いが、「JUNK」等の深夜トーク番組は若者にかなり人気がある。
特に、TBSの子会社化した7年前からは聴取者の若返りを図り、伊集院光や爆笑問題等を起用したお笑い路線を採用し成功した。一方で、大人を意識した番組も人気を集めている。
「例えば『アクセス』は、中学高校生向けの番組が多い22時台に政治・社会事象を扱い、大人も聞けるトークバトルの編成で注目を集めました。リスナーが生で論客と議論するのも好評で、幅広い世代を掴むのに成功しました」と、同社編成部の松本達也さん(90年卒)は語った。
こうした努力が実り、TBSラジオは首都圏の全ラジオ局で7年以上聴取率1位を保っている。様々な人の意見を聴くには、格好のラジオ局だろう。
一方で、特定のリスナーに焦点を当てて成功したのが、1988年開局のFM局、J-WAVEである。 「J-WAVEは邦楽だけでな
く、様々な音楽を楽しんでもらうラジオとして始まりました。英米式の音楽局として、当時の若者から熱狂的な支持を受けたのです」
同局のナビゲーターで、開局にも携わった大倉眞一郎さん(80年卒)は当時を回顧し、こう語る。
実際、J-WAVEの番組は他局と大いに異なり、扱う内容が極めて専門的で質も高い。また国際色も強く、審美眼のある大人向けのラジオ局と言える。更に、番組の流れを切らないような編成・チャンネルを心掛けているようだ。 「例えば僕が担当している
『BOOKBAR』(土曜23時放送)では、本と共に民族音楽等の様々な音楽を扱います。若い人は流行りの曲を好むでしょうが、未知の楽しさを知るという点で、J-WAVEの特徴を活かしています」と大倉さんは紹介する。
J-WAVEは、学生には「オトナの、未知の世界を味わうためのラジオ」だと感じた。 最後に紹介するのはTOKYOFM。1970年に開局し、全国38局と日本最大規模のネットワークを展開する、日本のFM文化を築いてきた局である。アーティストや音楽、著名人を中心とした番組編成で前述のJ-WAVEよりは親しみやすいだろう。 また、国民的FM番組『JETSTREAM』、月間5
千万PVのアクセスを誇る『SCHOOL OF LOCK!』など、全国ネットだからこそ持てる独自性もあると、編成制作局番組制作
部長の延江浩さん(82年卒)は語る。
「地域毎にリスナーの趣向は変わりますね。各地の様々な御意見を汲み、独自性を番組で出せるのが私達の強みだと思います」 なるほど、そう考えれば楽しめるかもしれない。「ラジオをまだ聞いた事もない」という方には、お勧めのチャンネルである。
最後に学生へのメッセージを伺うと、次のように答えてくれた。
「ラジオは聴覚と想像力を使い、感性を磨く上でとても役に立つと思います。学生の皆さんにも一度、ラジオを聴く経験をしてほしいです」(松本さん)
「学生は、時間も頭の柔軟性もまだある頃。視野を広げる意味でも是非3回はラジオを聴いてほしい」(大倉さん)
「9・11の時、ニューヨークのDJ達は『イマジン』を流し続けました。短絡的な憎悪を抱く前に、考えてみようというメッセージですね。ラジオは音のメディアであり、殺伐とした世の中で温もりを与えられると思います。ぜひラジオを聴いてください」(延江さん)
ラジオは考えさせる媒体である。あなたもラジオで、自分の「世界」を描いてはいかがだろうか。