東日本大震災、そして「フクシマ 」が起こったその時から5年後の現在に至るまで、日本と密接な関係にある国の一つであるアメリカの人々はどのような思いで日本を見ていたのだろうか。 当時を記憶する、同世代の大学生を訪れた。

アメリカ、ニューヨークの中心部マンハッタンに、歴史ある大学がある。現大統領のバラク・オバマも輩出したコロンビア大学(Columbia University)だ。そこで東アジアの政治を学ぶ4年生のSylvie Lamahさんに話を聞いた。

コロンビア大学のSylvie Lamahさん
コロンビア大学のSylvie Lamahさん
Sylvieさんはニューヨークに10年以上住んでおり、日本を訪れたことはない。しかし、5年前の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故は今でも記憶している。テレビやインターネットのニュースで流れてくる映像は、地震をほとんど経験したことのなかった彼女にとって衝撃的なものだった。日本に住む知り合いのことを心配し、心を痛めた。

福島での事故後、アメリカ政府は国内の原子力発電所全ての安全性を調査した。「フクシマ」は原子力大国アメリカの政策にも大いに影響を与えた。

ニューヨーク郊外にも原子力発電所がある。彼女自身、その存在については学校で習ったのみであまりよく知らないことも多いが、「フクシマ」を受け、その安全性に少なからず不安を感じている。しかし、政府が簡単に悲劇を起こさないよう努力している、と信じている。

現在、日本を訪れることを計画している。主な目的は日本人に英語を教えることだ。地方で温泉に入ったり、郷土料理を食べたりすることにも興味がある。今のところ福島を訪れる予定はないが、事故のあった現地の状況を知ることが意味のあることであれば、訪れることは厭わないという。

実際に、彼女は事故後も継続的に日本を訪れる友人を何人も見てきた。「事故の事実以上に、日本は魅力的な場所」と話す。「不幸な事故が海外の人々を日本から遠ざけるようなことは、日本人が感じていたよりも起こっていないと思う」

取材後、記者は乗り込んだタクシーのドライバーに「東北のタクシーの運転手は、ツナミで亡くなった人のゴースト(幽霊)を乗せると新聞で読んだけどそれは本当か?」と唐突に尋ねられた。 彼もまた、テレビで見た当時の東北の光景が目に焼き付いているという。

あの日から5年。日本から遠く離れたニューヨークに住む彼らもまた、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故をそれぞれの形で記憶していた。
(平沼絵美)