世界一周と聞くと何か別世界の話のように聞こえるだろう。事実、世界中を旅できるだけの時間を確保できる人は限られる。前田塁さんは慶大学部生の頃に世界一周を経験した人間の一人だ。帰国後、仲間とともに学生団体TABIPPOを立ち上げ、「若者が旅する文化を創る」をテーマに、若者の旅を支援している。団体ではイベントを開催したり出版物を発行したりすることで旅の魅力を発信し続けている。
大学生の可能性は無限大だ。サークルを頑張るのもよし、バイトに費やすのもよし。しかし、サークルやバイトの活動にはある程度の既定路線がある。始めた時点で大体のゴールが見えてくる。
一方、旅は全く新しい経験の場である。旅に出るごとに自分にないものを得られ、ある意味で終わりがない。帰ってきてもまた次の旅が始まる。旅先では常にハプニングが付きまとい、思いもしなかった所に行きつく。「未知だからこそ面白い」。前田さんはそう語る。
では、学生が世界一周することにはどのような意義があるのか。「ドアと壁という例えを使うことがある。ドアは可能性を広げるチャンスを手にできるもの。壁は、そのチャンスを向こう側に隠しているもの。目の前に壁があると知らずの内にチャンスを逃してしまう。自分の培った経験が多いほど、壁をドアにすることができる」。人生の早い段階でドアをたくさん開けていけば、自分のやりたいことに出会う可能性も広がるということだろう。
前田さんは印象に残っているエピソードを語ってくれた。「チリのイースター島で19歳のブラジル人と一緒に旅をしていた。彼は喉を怪我しており、流暢に言葉を発せない。最初はそんな彼を上から見ていてしまっていたが、彼はそんなこと全く気にしていなかった。負い目を感じず、自分の好きなようにやる。僕にとっては衝撃的だった」
学生にとっては100万円用意する方が100日用意するよりも難しい。これに対して社会人は、100日用意する方が100万円用意するよりも難しい。世界一周をかなえやすいのはどちらだろう。旅立つべきは、学生である今なのだ。海外は日本国内とは違って、目にするもの全てが新しいものである。新しい経験が自分にとってプラスに働く。この春休み、是非海外に足を運んでみると良いだろう。
(長谷川裕一)