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東京銀座に本社をおく訪日外国人向け旅行代理店(株)ティ・エ・エスは主に東南アジアからの観光客に対してサービスを提供している。現在、注目を集める観光業についてお話を伺った。

グローバル化の本質が均質化であることは認める。しかし今現在、現実のレベルで考えると自分たちと異なる文化を「受け入れる」、「理解する」ことが大事になるのではないか。

私たちは旅行代理店として、東南アジアの方々を中心とした年4万人の訪日外国人に対してサービスを提供している。

人気があるのは東京と大阪を繋ぐルートだが、雪を見ることの少ない東南アジアの方には冬の北海道など雪を見るという体験ができると人気が出ることも多い。特に最近では立山黒部アルペンルートも人気が出てきている。

ただ、日本に住む私たちが面白いと感じるものでも、海外の方にはそれを理解していただけないこともある。また、海外の方は災害には敏感で、東日本大震災の後は軒並みツアーのキャンセルを受けることもあった。東南アジアの方々は家族旅行であり、月収が5万円程度という所もあることを理解していなくてはならない。そういう人々にとって日本の物価は高く、そのために提供するサービスや商品に対して過剰な期待を持たせてしまうことがあるからだ。

「受け入れ」、「理解」をした上で、さらに訪日外国人を迎えるにあたって重要なのは柔軟さだ。海外からの観光客の中にはかなりの財力を持っている方もいる。彼らの中にはお金さえ積めば何でも許されると思っている方もいるため、こういった旅行客の困難な希望にうまく対処するにはマニュアルによらない対応がする必要だ。

ハードの面でも、日本が海外旅行客を受け入れるには多くの問題が残っている。例えば、東京の駅の構内は日々利用している私たちにとっても複雑でわかりにくい。さらに、WiFi環境の脆弱さもある。日本では各キャリアが日本各地に電波網を張り巡らしていることもあってか、フリーWiFiの普及が進んでいない。海外からの観光客はFacebookやTwitterを使って日本滞在中の様子を知り合いに発信しているが、wifiの環境が不十分だと発信できるものも発信できない。

そもそも観光客を受け入れる宿泊施設の不足など、キャパシティに関しても不安が拭えないし、英語表記の普及も重要な課題だ。

訪日外国人の方々にはせっかく日本に旅行にきてくれたのだから、良い日本のイメージを広めてもらいたい。今はSNSによってだれでも簡単に情報を広めることができるので、海外にいる日本に来たことない人にも知ってもらうことができる。良いイメージはさらに観光客を呼び込む材料になるし、逆に悪いイメージは潜在的な来訪者を失ってしまう可能性がある。

観光産業自体をマクロな視点で見ると他の産業に依存している点でリスキーな産業だといえる。第一次産業や第二次産業はもちろん、ホテル、航空会社などの他の第三次産業からも大きな影響を受けるからだ。

また、現在2020年の東京オリンピックに向けた準備が進んでいるが、多くのサービス業に携わる人はこれを一過性の需要であると考えている。オリンピック後のことも考えると民間企業が大規模な開発に着手することは考えにくいだろう。

日本に住んでいる方の国内旅行に関していうと日帰り旅行が増え、宿泊は減ってきている印象を受ける。LCCの登場など安くで国外への航空券が得られるようになったのも一因だろう。これからはリタイア後の高齢者を国内旅行のお客として取り込むことが必要だ。

海外に目を向けると今後、東南アジアは豊かになって生活水準や労働賃金は底上げされるだろう。多くの人がさらに日本を含めた国外へと旅行を始めるかもしれない。訪日観光客の受け入れは弊害もあるが、地方創成に関して大きな役割を果たすことになるだろう。
      (田島健志)