車が空を飛んでいる。それは、生ごみ由来の燃料で動く。サービス代行ロボットが普及し、『ジョーズ19』の予告ホログラムが街頭に出現する。スケボーからは車輪が消え、宙に浮かぶ「ホバーボード」に進化した。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』に描かれた2015年10月21日の日常風景である。

タイムトラベル映画の名作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズは1985年から順次公開された。主人公マーティ(M・J・フォックス)が友人ドク(C・ロイド)の発明したタイムマシンに乗り、過去と未来の騒動に巻き込まれる物語である。乗用車デロリアン型のタイムマシンは作品の象徴的なアイテムだ。

映画なんて所詮は妄想だと思う人もいるだろうが、その認識は甘い。2015年の世界は、30年前に描かれた「未来予想図」のかなり近いところまで到達している。

空中に3D映像を投影する装置は、慶應義塾大学の舘暲教授らが2014年に発表している。「ホバーボード」はアメリカのHendo Hover社が製造し日本でも発売が決定している。空飛ぶ車も、スロバキアのAeroMobil社が試作品を完成させ、試験飛行段階にある。

百年前の日本にも「未来予想図」があった。1901年に『報知新聞』が掲載した『二十世紀の豫言』という記事である。

ここには携帯電話やカラー写真、エアコン、果てにはネットショッピングまでもが予言されている。21世紀では当たり前の技術でも、当時は夢物語だったはずだ。動物と自由に会話ができるなど、外れた予測はあるが、科学技術白書(平成17年版)によると予言の全23項目中半分以上が的中しているという。同書の表現を借りると「人類の福祉と生活の利便性の飛躍的な向上に貢献し、人間活動の広がりを実感できた百年であった」ことは間違いない。

現代は、過去の夢に追いつきつつある。ではここから先の未来はどうだろう。

「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」

SFの父と称される作家ジュール・ヴェルヌの言葉だという。SFが先か科学が先かというのはよく議論の種になるが、少なくとも想像「できてしまう」ことは実現と紙一重なのではないか。今や人間は月に行き、生命を造り出し、ボタン一つで自らの歴史を終わらせることもできる。

科学は人々に夢を与え、繁栄をもたらす。しかし、行き過ぎた発展は危険を招くこともある。行きつく先は、『ドラえもん』か『ターミネーター』か。技術が目まぐるしく発展する現代では、逆に予想が難しい。だからこそ面白いのである。
(玉谷大知)

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