育児の形を父親から発信
就職活動が本格化し、多くの塾生が大きな決断を迫られている。その結果によって今後の生活がある程度決まるのだから、ここが一つの人生の転機であることは間違いない。
しかしそう遠くない未来には結婚、育児というさらなる転機も待っているはずだ。自らの結婚や子育てについても、今のうちに考えてみてはどうだろうか。
今回は育児を楽しむ父親たちの団体、ファザーリング・ジャパンを立ち上げ自らも積極的に子育てに関わっている安藤哲也さんにお話を伺った。
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活動の始まりと目的
安藤さんは娘1人と息子2人を育てる父親だ。NPO法人であるファザーリング・ジャパンを立ち上げたのは2006年。自身が子育てと仕事の両立に苦労したこと、カナダにある同様の団体に刺激を受けたことがきっかけとなった。
目指しているのは「今後10年で父親が育児をする社会を当たり前にすること」だ。現在の活動は子育て支援、少子化政策への提言や講演会、メディアでの広報啓発など多岐にわたり、ファザーリング・ジャパン全体のの会員数は400名ほどになった。
イクメンの次は「イクボス」
特に力を入れているのは「イクボス」の養成である。イクボスとは育児や介護など部下の生活事情に対して理解と配慮ができる上司のことを指す。育児に積極的な男性「イクメン」や、子育てしながら働く女性も増え、最近では「男は外で働き、女は家を守る」という考え方は変わりつつある。
一方、会社で管理職にある男性の多くは専業主婦の妻を持つ世代であり、いまだに男性の育休取得や女性の職場復帰に適切な配慮ができないことがある。上司がこれからの育児に正しい認識をもつことが、子育てのしやすい会社をつくることにつながる。
育児経験も仕事に活かして
安藤さんは、「育児自体の経験が仕事にも良い影響を与える」とも主張する。
彼の周囲には実際に育児を経験した後に昇進をしたり、独立企業で成功した者も多い。子育てを経験して身に付いた人格の尊重、傾聴、共感といったものがビジネスの場面で交渉や部下の育成に直結するためだ。
アメリカでは育児休暇の経験が転職においても有利に働くことも増えてきているという。また、子どもを介した地域や親同士のコミュニティの中で得られるスキルも沢山あり、「MBAよりPTAが役に立つ」とさえ言われている。
二人で働き育てる時代
「今後は共働きの家庭が増え、夫婦がともに育児に携わることがスタンダードになる。男性はそれを認識しなくてはいけない。また、女性も既存の母親モデルに引っ張られることなく、自分自身の人生設計をしっかり描くべきだ」
時代とともに、家族の形も変化していく。これまでの考えに縛られず、そのとき、その家庭にあった父親、母親の役割というものを考えていくべきなのかもしれない。
(田島健志)