福島から4年 年内にも原発再稼働へ

2011年3月11日、東北地方を襲った東日本大震災は揺れの大きさ、津波の甚大な被害に加えてもう一つの衝撃を与えた。福島第一原子力発電所の事故だ。
これを機に安全だと言われ続けてきた原子力発電へのイメージは一変した。福島第一原発の周辺は帰還困難区域に指定され、4年経った今も事態は収束していない。
事故の発生後、北海道電力泊原発3号機が定期検査に入ったことで、日本国内の原発は全て停止した。しかし昨今、再稼働に向けた動きも本格化してきている。昨年9月、九州電力の川内原発1号機と2号機が全国の原発で初めて原子力規制委員会の審査に合格し、地元の同意も得た。今年の2月には関西電力高浜原発3号機と4号機も審査に合格し、年内の再稼働はほぼ間違いない。


問われる再稼働のプロセス どこが地元で誰が地元か

川内原発から30km圏内には薩摩川内市のほかに阿久根市やいちき串木野市、鹿児島市の一部などが含まれる
川内原発から30km圏内には薩摩川内市のほかに阿久根市やいちき串木野市、鹿児島市の一部などが含まれる

原発再稼働が政治的な判断である以上、民主的な手続きをもって是非は決められなければならない。元宮城県知事の浅野史郎氏によれば、再稼働のプロセスの地元同意には2つの焦点があるという。

1つの焦点は地元同意の範囲だ。川内原発の再稼働手続きで地元同意の範囲とされた自治体は立地自治体の薩摩川内市と鹿児島県だ。果たしてこの範囲は適切なのか。浅野氏は「仮に事故があったとき、被災地の範囲はどこまでなのか。立地自治体だけの問題ではないはずだ。立地自治体周辺の自治体の同意も得なければいけないのではないか」と語る。

事故が起きた時のために避難などの緊急防護措置を準備する緊急時防護措置準備区域(UPZ)には川内原発から30km圏内の7市2町が指定されている。実際に事故が起きればこの範囲に住む約21万人が影響を受けることになる。さらに避難民の受け入れをするのはUPZ圏内の周辺の自治体だ。どこまでが地元と呼べるか、検討することが重要だ。

もう1つの焦点は同意するのは誰かということだ。川内原発の地元同意では薩摩川内市の議会と市長、鹿児島県の議会と知事の4者の賛成をもって同意とした。浅野氏は「地方自治は2元代表制で自治体の首長と議員は住民の代表だ」とした上で「ただ、彼らは自治体そのものではない。自治体は住民の集まりで原発の再稼働という大きなテーマは住民の生活にも大きく関係してくる以上、本来は住民投票をやるべきだった」と語る。

川内原発の1号機は2011年5月から、2号機は同年9月から定期検査に入っている。一方、薩摩川内市議会選挙は2012年10月、鹿児島県議会選挙は2011年4月に行われており、選挙の時点と現在では住民の再稼働への関心は違う。

浅野氏は「原発の再稼働は安全性と安心感だけで判断するべきだ。電力不足だからといって、安全でない原発を動かすことにはならない。料金の値上げや電力不足、余剰が再稼働の要件に入るべきではない」とも語る。原発の安全性が担保されることは再稼働の大前提として、その上で心の問題として1人1人の住民がそれを信頼できるかが問題だ。政治はその1人1人の判断を拾って再稼働の決断をする。それこそが福島を経た我々に求められていることなのではないだろうか。(寺内壮)