いい製品で勝負 海外にも対応
慶大ビジネススクール(KBS)の第2回公開講座が先月20日、三田キャンパス北館ホールで開催された。今回は小幡績准教授が登壇し、「Perfume、AKBそしてKPP~新しい時代のファイナンス理論:KPP理論」と題し、日本におけるアイドルの成功要因を企業の経営理論やファイナンス理論に置き換えて論じた。
まずPerfume、AKB48、きゃりーぱみゅぱみゅという日本を代表するアーティストたちの良さと成功の要因を来場者とのやり取りも交えて考えた。日本のアイドルは、コンテンツなどという空虚なものではなく、本質を重視していると小幡氏は考える。海外におけるアイドルが憧れの対象なのに対して日本におけるアイドルとは愛する対象だ。アイドルにおいては、愛がすべてであり、コンテンツなど形だけのものは重視されない。
その愛とは日本企業にも見て取ることができる。日本の代表的な家電企業であるシャープ、ソニー、パナソニックなどの失敗の要因には「愛」があるという。具体的には、シャープが液晶テレビ事業に過度な愛を注いだことや、ソニーナルシズムとも呼ばれる「ソニーらしさ」という自己愛が挙げられる。さらにパナソニックは前身である「松下電器」時代の誇りを捨てることができなかった。
続いて小幡氏は先に挙げたアーティストたちの成功例を挙げながら、日本企業が復活するための方策を述べた。
まず日本企業をPerfumeに例えた。Perfumeはライブを自らが何より楽しんで行うという。日本企業においても自分たちが愛する製品を、愛する顧客に届けるという姿勢について素晴らしいとした。
また、握手券をCDにつけるなど、ファンの愛を利益に変えることができた例としてAKB48を挙げた。この手法は経営者として当然のことをしただけであり、足りない点なのだという。
その上で日本企業の実現可能性が高いモデルとしてKPPつまり、きゃりーぱみゅぱみゅを挙げた。いい製品で勝負し、同時に海外への移植可能性が考えられている。コンテンツを活かしながら国に合わせて売り方を変えるということが日本企業には足りないのだという。
芸能界においてプロダクションはまずは多くの新人をデビューさせ、そのうちのヒットしたアイドルを集中的に売り出していく。それは企業にも言えることだ。「どこで売るのかというのがマーケティングで、勝負どころでの動員タイミングがファイナンスである」と小幡氏はKPP理論についてまとめた。