塾生新聞は創立時から45年に渡って、新聞を発行し続けてきた。45年もの月日の間に、新聞以外のメディアが台頭し、新聞を取り巻く状況は刻々と変化してきたといえる。また、近年では若者の活字離れやインターネットの発達によって、新聞というメディアそのものが転換期を迎えている。 創刊500号というこの機会に、さまざまな立場から新聞の特徴や今後進むべき道を見つめてみたい。
(寺内壮・長屋文太・藤浦理緒・榊原里帆・成田沙季)
◆毎日新聞
東京本社 編集編成局長 小川一氏
一本一本の記事で勝負
新聞を取り巻く状況は劇的に変わった。現在、日本の朝刊発行部数は約4700万部である。だがこの10年で510万部減り、1年間でも77万部減った。原因はネットの普及だ。これまで紙にパッケージして有料で提供してきた情報がバラバラになり無料で入手できるようになった。若者のネット利用時間も長くなった。
現在は紙媒体の新聞が売上の7割を占めているが、このままでは厳しい。ネットでのビジネスモデルを5年から10年の間に作りたいと考えている。今は個々の記事がバラバラになって流通する時代だ。そのため、いい記事を提供すれば有料でも読んでくれるだろう。紙の新聞より収益性が高くなる可能性もある。
例えば津田大介氏のメールマガジンは何千人に有料で読まれている。一人でもできるのだから、約1600人の記者を有する毎日新聞にできないはずがない。津田氏のように有料でも読みたいと思わせられるジャーナリストを育てていく必要がある。調査報道はプロの手によらなければできないことだろう。読者の知る権利に応えることが新聞を購読することへの対価になるのではないか。
紙の部数が発信力だった時代と比べ、毎日新聞にとっていい時代がやってきた。紙媒体のみで埋められなかった発信力の差をウェブや電波と組み合わせれば埋められる。地方紙の記事がウェブやテレビで注目されることもある。毎日新聞はユニークな記者がたくさんおり、好機だと言える。
情報の表現方法がウェブと紙面では違う。ネットにはリアルタイム性やアーカイブ性がある。情報にデータを加え、立体的な図を使って視覚的に訴えることもできる。会見を動画で中継し、同時進行で読者から質問を募る試みもある。
紙媒体としての新聞がなくなることは絶対にない。いずれ部数は下げ止まるだろうし、早く下げ止まるように努力していく。紙面は一覧性や価値基準の判断ができる点で優れている。ITジャーナリストも毎日必ず新聞に目を通すそうだ。将来的にはコミュニティごとに新聞をシェアをすることも考えられるだろう。
これだけネットが発展した状況は新聞の価値が見直されるチャンスだ。情報洪水の中では正しい情報の価値基準が必要になる。ネットと読み比べれば、新聞の情報の信頼性が不可欠であることがわかるからだ。
新聞にしかできないことを作り出さなくてはならない。誰もがSNSで情報を発信できる時代だが、プロの記者にインタビューをされることで考えがまとまり、胸のうちを明かすことができる人もいるだろう。そのようなことを充実させれば新聞はもっと評価されるのではないか。