『慶大蹴球部松永道場』の掟は、以下の通りである。
一、ひとつひとつのプレーに気力、魂をこめろ
一、倒し勝つ、当たり勝つ、走り勝つ、を完璧に実行せよ
一、 文武両道を実践し、真のリーダーになれ
松永敏宏。今年、慶大蹴球部の新監督に就任した43歳。自身、慶大蹴球部時代には主将を務め、社会人の時にラグビー日本代表も経験した松永氏に、慶大蹴球部監督就任の依頼があったのは、昨年の12月末日であった。
「ここ12年くらい、ラグビーに何も関わってこなかったので、不安はないことはなかったです。ただ、今の私があるのは(慶大)体育会蹴球部のおかげだし、そのご恩をお返ししなければいけないと思っていました」
今年の春から、フルタイムの監督として本格的に始動。毎年恒例の夏合宿では「戦術がある程度確定できた」という。
「倒し勝つ、当たり勝つ、走り勝つの『当たり勝つ』の面を特に注意して、今回の合宿に臨みました。作ってきた体をないがしろにしない、痩せさせないようにすることです。走りこみやスクラムを組む回数が、足りなかったのは残念。しかし、チームとしての戦術・戦略が固まってきたことには、手応えを感じていますね」
今年も昨年同様、「ディフェンス重視」のコンセプトは変わらないようだ。
「まず、スクラムで相手にプレッシャーをかけ、ハイパントできっかけを作り、そしてタックルでターンオーバーし、つないで(得点を)取る。ある意味『昔』の、泥臭いラグビー。慶大らしいひたむきなプレーでもって、相手を完封したいと思っています」
松永監督自身、そしてチーム全体も、今年の目標は「打倒早稲田」一本である。
「まだまだ、目標の早稲田に追いついていないと思います。練習を一生懸命するのはもちろんですが、早稲田戦までの(対抗戦)六試合を通じて、スクラム・ラインアウトの精度、モールの強さやブレイクダウン・ハイパントの正確さ、前へ出るディフェンスなど、すべての面を向上させていきたいと思っています」
今夏、日吉下田地区にある体育会蹴球部グラウンドは、全面人口芝へと様変わりした。松永監督も「プラス面しかない」という通り、環境面でのインフラは着々と整いつつある。あとは、選手達がグラウンドの上でどれだけ結果を残すか、その一点にかかっている。
「今年は、感動していただけるようなラグビーをしていこうと考えているので、是非応援よろしくお願いします」
戦術云々の前に、まずは気持ちで絶対に負けるな。当たり前ではあるが、軽視されがちなこのことに『松永道場』はあくまでこだわっていた。そして、監督自身好きな言葉である「ネバーギブアップ」の精神が、選手達に完全に浸透したとき、慶大蹴球部はより一層の高みへと到達する。
(安藤貴文)