国内で貧困をはじめとする社会問題が注目される今日。そのような状況下で、海外に視野を広げて活動している学生団体がある。
vistaプロジェクトチームは発展途上国の社会問題と、問題解決のための活動を紹介するフリーペーパーvistaを発行する団体。日本の若者の問題意識を高めることを目的としている。
「自分の知らない世界を見てみたかった。どうせ行くなら、普通の海外旅行とは異なる目的が欲しかった」と創刊メンバーの岩田貴文さん(東京大学3年)。岩田さんの思いがきっかけとなり、2006年12月、vistaプロジェクトチームは発足した。
インドを取材しフリーペーパーをつくる、ということは決まったものの、航空券を手にした時点では協賛企業もなく、取材の約束すらとれないという状況。現地の公衆電話で複数団体に約束をとりつけ、帰国後は書き上げた記事を持って企業を回った。
前途多難な状況の中でモチベーションが維持できたのは「インドへ行ってしまった」から。「とにかく行かないと、頓挫すると思った」。行動力が功を奏する形となった。
その後、vistaは順調に版を重ね、来月初めには第4号が発行される。第4号編集長の芳賀彩花さん(東京大学2年)は、vistaに関わる利点として、「二重の成長」を挙げる。
発展途上国の社会問題に実際に触れるという経験はもちろんのこと、フリーペーパー作成を通じ、学生でありながら、一種の社会体験ができることは大きい。
しかし、やはり大学生が活動の主体であり、プロのジャーナリズムを目標にすると敵わない。取材先は限定され、編集技術も及ばない。だが、学生だからこそできることもある。
「社会問題に興味のない学生にも親近感を持ってもらえるよう工夫している。学生視点から、わかりやすい誌面を目指している」と芳賀さんは話す。
メンバーは1、2年生が中心。現在は、8人と少数であるため、1年生のころから記事編集、デザイン、渉外など各パートを1人で担当する。また、記事はメンバー全員で書く。「個人の責任は重いが、裁量も大きい。良くも悪くも自主性が求められます」と岩田さん、芳賀さんは口を揃える。
やはり自主性が求められる分、vistaの活動に意義を感じ、主体的に参加する学生が集まる。指示を待つのではなく、自身で学びとる姿勢の必要性を感じた。創刊メンバーの行動力は受け継がれている。
(西原舞)