2011年3月11日14時46分に発生した東日本大震災は東北地方から関東地方の沿岸部に壊滅的な被害をもたらした。現実味の湧かない被災地の映像、原子力発電所の危機的な状況、当時、高校生だった自分も相当の衝撃を受けたことをよく覚えている。
東日本大震災が我々に及ぼした影響は計り知れない。電力供給などの直接的な影響はもちろん、例えば人生観、仕事観といった価値観の変化など、アイデンティティの根幹を揺るがすような出来事でもあった。
その震災から今年の3月で3年が経つ。被災地に関する報道も原発に関するものを除けば、確実に減った。しかし、被災した人の中で震災は終わることなく、これからも続いていく。
震災3年の特集でこの半年間、だいたい月に1回は東北に向かった。被災地を訪ねて、様々な立場の人に話を聞いた。その中で気づいたことは、一口に被災者といってもいろいろな立場、考え方を持った人がいるという当たり前のことだ。
それでも得てして我々は彼らを「被災者」という言葉で括ってしまう。そういう1個のものがあって、そこに統一された1つの意思があるかのように考えてしまいがちだ。
でも決してそんなことはない。「被災者」という言葉を構成するのは1人1人の人間で、それぞれが感じ、それぞれが考える。身近な人を失った悲しみからまだ立ち直れない人もいれば、すでに新しい1歩を踏み出している人もいる。忘れられたくないという人もいれば、忘れてしまうのはしょうがないという人もいる。
それこそがまさに震災から3年経ったということなのかもしれない。それぞれにそれぞれの生活があり、復興と一口に言ってもその程度も違う。言い換えるなら、被災者の1人1人に差が生まれてきた。だからこそ今重要な視点は被災者の個々に目を向けることなのではないだろうか。辛い人のそばにいつまでも寄り添い、新しく頑張る人を応援する。それこそが我々の東日本大震災への向き合い方なのだと個人的には強く感じた。
最後に震災3年の折に触れて、「忘れない」という言葉がよく出てくる。私は思う。本当に忘れたくなければ、東北に行ってみるといい。友達でも連れてただ遊びに。そうすればきっと忘れることのほうが難しい、いい思い出になるだろうから。 (寺内壮)
本特集は、樫村拓真、片岡航一、長屋文太、藤浦理緒、武智絢子、寺内壮がお送りしました。