家族の一員であるペットたち。今までの人生を彼らと共に生き、彼らから多くを学んだ方も多いだろう。一方で、不慮の原因ややむ得ない事情により、家族との生活を全うすることなく、失われている命もある。
その現状を知るため、東京都動物愛護相談センターにお話を伺った。同センターの仕事は多岐に渡り、大きく「動物愛護思想と適正飼養の普及啓発」「調査研究等」「動物の保護管理」の3つに分けられるが、今回は「動物の保護管理」について伺った。
動物たちは主に飼い主不明で保護・収容される。迷い犬のうち35%は飼い主に引き取られるが、見つからないまま7日間の飼養期間を過ぎると致死処分されてしまう可能性がある。見つかっても手遅れになっているということもある。迷子になってしまった場合、すぐにセンター等に連絡をし、早めの対策が必要である。この時重要になるのが鑑札であるが、届けられる犬の中でも鑑札を持つものは全体のわずか2・6%であり、登録していない時点で違反であるという。
また、迷い犬といっても、捨てられたと考えられる場合もある。多くは証拠がないため迷い犬として扱っているのだ。しかし、もし直接捨てる現場に居合わせるなどして証拠がつかめた場合、センター側で告発するという。動物の愛護及び管理に関する法律・条例の一部改正により、違反の際の罰則強化や、以前は届出制だった管理も現在は許可制になり、制度上も厳しくなっている。
やむをえない場合に限っては、所有者からの引き取りを行っている。最も多い理由は飼い主の病気である。高齢者の一人暮らしや夫婦が病気になった場合、治療や介護をしながら飼い続けることが難しい。次に多い理由が「転居」である。個々の複雑な事情があることから詳しくは聞けないそうだが、これも単なる引越しではなく離婚や破産によるためであるという。このように、社会や経済状況も引き取り数に影響しているのだ。
現在、不妊手術の普及により子犬・子猫の引き取りは減少している。また譲渡の数も増え、返還・譲渡率は10年前の約50%から78%にまで上昇している。前述の通り、引取りの場合には個々の事情があるため完全になくすことはできない。だが、少なくとも迷子になった犬を飼い主がすぐに探し返還すれば、引取った分だけの譲渡で済む。センターでは更に、10年後には85%の返還・譲渡率となることを目標としている。
ただ、減少しているとはいえ、今も消え行く命があるのは事実である。ホワイトボードに書かれた「搬送日」の文字はいまもそこにある。
(川上典子)