今夏の天候について、読者の皆様はどう思われているだろうか。梅雨入り宣言が発表された後も、日中は相変わらず強い日差しが照りつけ、断続的にしか雨の日が来ない。このような天候の変化は、私たちの消費生活にどのように影響しているのだろうか。今回は、天候による消費者行動の変化、また、それに対する企業の対応について取り上げていきたい。
あるデータによれば、最高気温が11℃になると人々は冬服から春服に、20℃になると夏服にシフトする。また、22℃でビールの、29℃でお茶(ペットボトル)の売上げが急激に伸びるという。不思議なことに、各々の判断で買い物を楽しんでいるにも関わらず、消費者全般に共通する、天候に即した行動変化の法則は数多く見受けられるのだ。企業が消費者行動を予測するに当たり、天候のデータは不可欠と言える。
天候リスクが大きい、つまり天候の変化が収益減・コスト増を招きやすい業種の一つとして、エアコン業界を例に挙げてみよう。エルニーニョ現象が発生した97年は6・7月の雨が記録的に多くなり、エアコンの販売台数は低減した。業界内の国内出荷額で言えば、9000億円強から7500億円へ落ち込み、前年比約17%の減少だった。これは企業にとって、由々しき事態であった。近年において、天候の変化はますます予測不能となり、企業の背負うリスクはさらに大きくなっている。
そこで最近ではあらゆる業界で、天候による不測のコストを効果的に処理するための「天候リスクマネジメント」が採用されている。近年拡大しつつあるという「天候デリバティブ」制度も、天候リスク対策の一つだ。これは企業が基準とする天候条件に当てはまった場合、設定金額がキャッシュバックされる仕組みで、損害保険などでも時折見受けられる。天候リスクを逆手に取って、消費者の心理的なニーズを捉えた手法である。
このように、天候・消費者・企業の三者の関係は非常に密接だ。いよいよ夏休みがやってくるが、天候は相変わらず予測出来そうにない。不測の出費だけは増えないよう、くれぐれも注意してほしいものである。
(谷田貝友貴)
※今回の企画にあたり、株式会社タナベ経営から資料を提供して頂きました。