旧暦8月15日は「中秋の名月」だ。全国各地でそれぞれの地方の習慣にのっとった、いわゆる「お月見」をする日である。今年は9月25日がそれに当たる。8月28日に日本で6年ぶりに皆既月食が見られたほか、9月14日には月周回衛星「かぐや」の打ち上げが世界に先駆けて行われるなど、月に関する話題が盛り上がっている。

 ところで、ロマンチックにお月見も風流だが、国際法的には月はどのように扱われているのか?宇宙法の視点から青木節子総合政策学部教授(宇宙法)と共に、少し現実的な目で月を眺めてみよう。

最初に身近な例から、月の土地の売買に関して伺った。一時期、月の土地の売買が流行った。現在では30万人以上が月の土地を買っている。しかし、本当に月の土地を売買することなど出来るのだろうか。

 まず何かを売るためにはそれを所有する必要がある。だが、宇宙条約によると宇宙空間と天体は「国家による取得」の対象とならないとある。そのため一般的には月の土地は所有できず、それに伴い販売も出来ないと解釈されている。

 しかし、月の土地を販売している業者は、国の領有は認められていないが個人の所有は規定されていないとして営業を続けている。現時点では購入者の側も遊び感覚で買っているため、販売業者に対する訴訟は確認されていない。しかし、段々と月への到達が現実味を帯びてきているため、月の土地の所有権を巡る訴訟が今後、起きてくる可能性がある。

 また、月の資源や土地は国際競争を引き起こす。現在、アメリカ・ロシア・中国が月・火星への有人着陸を目標としており、日本・インド、欧州宇宙機関も探査に力を入れている。「月の資源の開発制度について、宇宙活動国が合意する国際規則はない。競争が始まる予感がする」(青木教授)

 最後に宇宙法の今後について。青木教授は「月の資源の自由競争による開発を禁止する「月協定」の加盟国はわずか13カ国で、その中に宇宙先進国は含まれていない。99カ国が加盟している宇宙条約がこれからも中心となり続けるでしょう」と言う。ただ、この条約はまだ月の商業利用や兵器が現実的でなかった60年代に作られたため、規定としては不十分であるとされる。

 月をめぐる国際法にはまだ課題が残る。夜空に浮かぶ美しい月。それを眺める目を今後も変えていくことになるだろう。 

(川上典子)