学部生時代は「自分のやりたいことが何かを見つけられ」ず、その答えを見つけ出したいという思いもあり大学院へ進んだ。そこで『高齢者への労働供給の問題』に興味を持ち、学者の道に進む。今でもその問題が、自身の研究テーマである。

開設から丁度50年目を迎えた商学部。福澤諭吉の実学、すなわち実証科学の精神を受け継いだ学部である。そういった「商学部の目的」をレジュメにまとめて丁寧に説明するあたりは、几帳面な性格が窺える。

商学部では前桜本学部長のもと、カリキュラム変更が行われた。そんな状況下にあって、まずやるべきことは「前学部長のもとで行われたカリキュラム変更などの一連の改革を軌道に乗せること」と話す。他の多くの学部の中で強化・実行が検討されている学部間の連携にも、慎重な考えだ。「それぞれの学部には独自性や各々に違った理念がある。場合によっては他学部と競争していくべき部分もあるかと思います」

大学という舞台の主役はもちろん学生だ。舞台が「学部」であっても、主役となるのは学部生。「学部長としての最も大事な仕事は、教育と学問の自由を確保すること」だと思っている、と静かに述べる。

「いつでも好奇心、問題意識を持って欲しい。そして論理的な仮説を構築し、客観的に論証していってほしい。そういう自分の頭で考える能力が、社会人になった時に大切になってくる」。学生へのメッセージの裏には、やりたいことが何であるかを模索し続けたかつての自分自身の姿があるのかも知れない。

(羽原隆森)