人類は夜の暗闇の中で照らし続ける光を手に入れたことで、何百もの星が輝く綺麗な夜空を失った▼年の瀬になると自分の一年間を振り返る。よかったこと、つらかったこと、さまざまなことがあったが、いつも脳裏に浮かんでくるのは「踏み出せなかった後悔」を感じる出来事だ▼なぜあの時一歩を踏み出すことができなかったのか。それは決して踏み出すことで手に入れられる未来に恐怖を感じたからではない。むしろ「踏み出すことで失ってしまうものがある」ことに怯えている自分がいたからだった▼何かを選んで前に進むということは、同時に選ばなかった何かを捨てることになる。今までの歴史の中でも、人類は多くを犠牲にしてきた上で、今の文明を成り立たせてきた▼前へ前へと自分の道を突き進んで行く人には、踏み出す一歩一歩の歩みに力強さがあるだけではなく、何かを失う恐怖に物怖じしない心の強さを持っているのだと感じる▼2014年も自分の前にはたくさんの別れ道が現れるだろう。時には星空のように綺麗なものを失う選択をしなければならないこともあるだろう。だが、後ろを振り向かず前に進み続けられる強い心を持てる一年でありたい。 (小林知弘)