2005年に東京モーターショーにも出展した電気自動車のエリーカ(Eliica)。環境にも配慮したハイブリッドな車ということで、多方面から注目を集めている。2005年の時点では、2007年のクリスマスに発売予定だと報じられていた。本当に販売されるのだろうか。そして、現状はどうなっているのだろうか。
エリーカ開発の中心人物である環境情報学部の清水浩教授によると、現在、エリーカプロジェクトは一旦終わって、次のステップに進んでいる。
慶應義塾大学では、文部科学省の振興調整費の中の先端融合領域拠点化形成事業の予算で、コ・モビリティ社会の創成という研究を行っている。清水教授は現在、この研究の中で使う新しい電気自動車を開発している。
コ・モビリティとは何か。昔ながらのコミュニティがなくなり、インターネットを介したコミュニティが形成された。次のコミュニティは、移動が自由なコミュニティだ。コミュニティとモビリティを合わせて「コ・モビリティ」なのだ。
新しい電気自動車は、概念としてはエリーカと同じだが、新しいものは一人乗りだ。イメージとしては電動車いすを大きくしたようなものだと言う。新しい電気自動車を一人乗りにした理由について、清水教授は「車がものすごく普及したら、一人乗りになるだろうという予測があった。一人乗りなら建物の中にもそのまま入ることができる」と語った。
新しい研究では、エリーカのモーターが高性能化される。また、自動運転装置を取り入れ、免許がなくても車が使えるようにする予定だ。自動運転に関しては、環境情報学部の大前学教授が研究している。
自動運転になることで、運転する楽しみを奪うのではないかという意見もあると言うが、清水教授は「車は加速感だと思う。例えば、ジェットコースターは運転できないから楽しくないと言う人はいない。事故や渋滞を減らし、移動時間が自由に使えるようになれば、受け入れられると思う」と語った。
今の段階では、エリーカをいかに発展させるか、そして次の時代を見越した研究をすることを目指していると清水教授は言う。気になるエリーカの発売についてだが、「資金集めに苦労しており、発売を目指してはいるのだが、現在模索中」とのこと。
電気自動車を動かす役目を果たす、リチウムイオン電池は未だに高額なので、電池の価格が下がれば、エリーカの製作コストを抑えられるかもしれない。
我々の周りでは、新しい研究が次々と行われ、着々と近代化が進んでいる。映画や漫画の世界が現実のものとなるのも時間の問題のようだ。先人の夢の実現のためにも、エリーカの今後の発展に期待したい。
(島津しず香)