授業内ディベートで戦略を練る学生たち

好奇心が生み出す真の教養
「履修しないなんてもったいない」。慶大ならではの魅力的な授業を紹介したい。今年で開所11年目を迎える教養研究センターの看板授業、アカデミック・スキルズ(以下アカスキ)である。
この授業は、日吉キャンパスで開講されている極東証券寄附講座だ。情報収集の方法や効果的なプレゼンテーションの仕方、論文の書き方など、学問的・知的作業のスキルを1クラス20名前後の少人数で学ぶ。最終的には8000字の論文を完成させ、論文集にまとめて1年間の成果を形にする。1年生のうちから学習の成果を残すことができる授業は珍しく、論文を書き上げる達成感を味わうことができるのは格別だ。
アカスキは火曜日から金曜日にそれぞれ1コマずつ、計4コマ開講されている。1クラスにつき3名の教員が担当し、履修生は全クラス合わせても約100名。ほかの授業では提出したきりになってしまいがちな課題も、丁寧なフィードバックを受けることができる。教員と一緒に知恵を絞り、学生たちのモチベーションも高まるという。
指導する教員は学部も研究対象もバラバラで個性的だ。発想を引き出してくれる3人の教員に加え、大学院生のティーチングアシスタント(TA)もつく。教員との距離が近いため、教員が一方的に教えるのではなく、近い立場で議論ができる。複数の教員とお互いに学びあい、一緒に成長していけることが最大の魅力だ。
商学部の識名章喜教授が担当する金曜日5限の授業では、「個の知から集合の知へ」をテーマに、ディベートを通じてアカデミック・スキルズを身につけていく。ディベートでは是か非かはっきりした分かりやすいテーマを議論するため、導入としては最適だ。今年は出生前診断や小学校の英語教育導入を取り上げた。論文のテーマは、学部の枠にしばられない自由な設定が可能。識名教授は、「好奇心のアンテナを錆びつかせない授業がしたい」と語る。
アカスキが目指していることは、社会に出て課題にぶつかったとき、立ち向かえるような学生を育てることだという。教養研究センター所長である経済学部の不破有理教授は、「社会で求められている力は、アカスキで身につけられる」と話す。自分なりの問いを立て、資料を収集し、問題の所在を突き止め、解決策を考えて論理的に提示する。この過程は試行錯誤の連続だ。こういったことの繰り返しから、考える力や問題解決力が身に付く。論文を書くプロセスで得た力はそのまま社会に応用でき、学生たちの自信となる。
大学に入ると、学びが変わる。これまでとは違い、大学での学びに答えはない。自分なりの解を、他者との対話を通じて見つけ、学びあう。そのうえで、高校での勉強は学問の基礎であり、大学での学問に必ずつながる。だから高校生諸君は、自信を持って受験勉強に挑んでほしい。受験を乗り越えたその先には、好奇心を最大限に引き出してくれる教員と、さまざまな学部・学年のやる気に満ち溢れた学生たち、そしてなんともぜいたくな授業が待っている。

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先月末に教養研究センターのHPがリニューアルした。「はじめてのアカデミック・スキルズ―10分講義シリーズ―」は、誰もが自由に視聴でき、手軽に学べる。大学入学後のレポートや卒業論文執筆の参考にしてみてはいかがだろうか。  (岡庭佑華)