平成25年度義塾収支予算が発表された。今年度は、帰属収支差額(帰属収入―費支出)で約50・2億円を見込み、収入超過となった。これにより兼ねてから掲げてきた「投資的支出約100億円の半額にあたる約50億円を帰属収支差額で賄う」という目標を達成することになる。昨年度から新規事業への募金が始まったため、寄付金収入の増加が見込まれる。  (長屋文太)

帰属収支差額で50億円達成へ
昨年度決算は私立大学等経常費補助金の算定基準が変わったことなどによって、補助金収入が予算より増加。また、昨年秋ごろからの円安株高や金融緩和政策などにより、資産運用収入も予算より増加した。
一方、支出面では電気料金値上げが懸念され、値上げを見込んで予算を策定。慶應義塾全体で節電に取り組んだことなどにより、目標通り予算を達成することができた。
今年度予算では引き続き、財政を改善し、安定した収支バランスを実現するため「投資的支出約100億円の半額にあたる約50億円を帰属収支差額で賄う」という目標を維持する。財政改善に向けては「不要不急の支出を削減し、予定されている事業を計画的に行う必要がある」と経理部課長の長妻靖子氏は話す。
今年度の帰属収入において特筆すべき点は、昨年度から新規事業への募金が始まったことだ。この募金は、理工学部創立75年記念事業、SFCでの未来創造塾開設、大学病院の新病院棟建設を目的としている。2017年度までに140億円を集めることを目標とし、事業資金として利用される予定。そのため、今年度は寄付金収入が増加する見込みだ。
また、今年度から横浜初等部が開校したため、在籍する学年が増えるのに従い、年約1・9億円ずつ学生生徒等納付金が増収する。
一方支出においては、大型の補助金であった研究拠点形成費等補助金(GCOE)が昨年度で終了したことや民間企業からの研究受託が減ることを見越し、それらの支出が減少することを見込んでいる。しかし、国の経済状況が好転すれば研究受託が増加する可能性はあるという。
今年度の消費支出では、退職給与引当金繰入額が減少したため人件費はやや減じた。また、病院経費は昨年8月にオープンした信濃町3号館南棟が通年稼働することなどで増加。管理経費は、昨年度には横浜初等部開設に関わる費用が計上されていたため、昨年度予算と比較して減少した。創立150年事業への予算は今年度も計上している。理工学部の教育研究棟建て替えに約25・7億円、大学病院1号館の建設に22・5億円が充てられた。また、女子高等学校の本館・西館整備や横浜初等部開設に伴う備品購入費も含まれる。
そのほかの大規模事業として、普通部本校舎の建て替えに5・1億円、SFCでの未来創造塾の開設に3・7億円、各地区建物の耐震補強工事に4億円が計上された。
なお今年度は、塾長改選の年に当たるため、現在の予算案は暫定予算として発表されている。例年9月に開催される評議員会で常任理事による承認決議を経て、本予算として認められる。

 

【用語解説】 帰属収入は、学生生徒等納付金(学費)、手数料(入学検定料)、医療収入、寄付金、補助金などの収入であり、借入金収入などの負債となる収入は除かれる。消費支出は、人件費、教育研究経費、病院経費など、当該年度に消費する支出。帰属収支差額は帰属収入から消費支出を引いた額である。帰属収支差額のプラスは、自己資金として、将来的な施設投資や借入金の返済の財源を確保していることを示す。