お願いします、お願いします…

「高校時代から七夕の短冊に毎年”彼女欲しい”ってお願いしてるのですが一向にかないません。どうすれば僕に素敵な彼女ができるんでしょうか。何か願いをかなえる良い方法ありませんか?」(商1男)
*   *   *
「そんな都合のいい方法があったら、オレがこんな人生歩んでるわけねーだろ」と言うのは、彼女イナイ歴20年、筋金入りの独男の所員K(経1)。リア充な所長(理3)はこんな依頼に見向きもしていなかったのだが、「でも、今年こそ女の子と花火大会に行きたいなあ。できればスタイル抜群なS先輩(文3)と・・・」とKは、依頼者を救うため、というよりは自分の恋をかなえるために所長に内緒で調査を始めたのであった。
募る思いからグー○ル検索でキーボードを走らせる。が、断食、禁酒など育ち盛りの大学生にはきついものばかり。「こんなのやってまで彼女つくりたくねーよ」と自暴自棄になりかけたKだったが、ある一つの方法が目に付いた。パワースポット巡りといって縁結びにまつわる場所に毎日お参りして恋の成就を祈るというもの。「これ楽そうだな。でも近くにそんな場所あったっけ?」とKは住んでいる千葉県木更津市周辺の神社や観光名所について検索した。すると一つだけ恋にまつわる場所を発見。JR木更津駅から徒歩10分の距離にある太田山公園内の小さな森、別名「恋の森」。はるか昔、かの有名な日本武尊(ヤマトタケルノミコト)と妻の弟橘媛(オトタチバナヒメ)の悲恋をまつった場所だという。なんとも虫酸の走るような名前だが、時間もないことから仕方なく七夕までの約1カ月間、毎日参拝することに決めた。
短冊にこめた「あこがれのS先輩と一緒に木更津の花火大会に行けますように」の願いをかなえるためにKは雨の日も台風の日も、時には授業をサボり、必死に自宅から自転車で約20分の長距離(?)にもめげず通い続けた。いちゃつく猫のカップルのあわれみの目にも耐えたKはなんとか1カ月の苦行を終え、S先輩に想いを伝えることに。 「中学、高校とフラれ続けてきたけど、今回はここまでやったんだしいけるっしょ」と自信に満ち溢れた様子のKは帰り際に先輩を呼び出し、「ずっと好きでした。僕と付き合ってください!」と勇気を振り絞って告白。しかし「私年上にしか興味無いんだよね。ていうかあんた誰?」。そりゃ一回も話したこと無い奴にいきなりそんなこと言われたらこう答えるよね・・・。涙目になりながら「恋愛は願うものじゃなくて自分でかなえるものか・・・」と悟ったK。今年も家の窓から一人さびしく花火を眺めることになりそうです・・・。     (キノシトゥー)