義塾と塾生・塾員が一体になる大切さ感じた

清家篤塾長は2012年を、「義塾と塾生・塾員の一体感」の大切さやありがたみを強く感じた1年であったと語る。
第一に、東日本大震災からの復興が続けられたことを挙げた。義塾は2011年に創設した「慶應義塾東日本大震災被災塾生特別奨学金」を今年も引き続き給付してきた。この奨学金は「127三田会」及び「128三田会」という塾員をはじめとした方々の寄付で運営されている。義塾と塾生と塾員が一体となって、この被災塾生を含む被災地の復興を支援したことを大いに評価した。
第二に、今年の夏のロンドンオリンピック・パラリンピックに7人もの塾生・塾員が出場したことで社中を挙げての応援が行われたことを挙げた。慶應の場合はオリンピックに出場するようなトップアスリートも文武両道を貫いているとし、「教室で机を並べて勉強している人たちだからこそ、皆も熱心に応援する」と、塾の良さに触れた。
また、2012年は東大が問題提起した秋入学の議論や震災後の電力事情を踏まえた節電の要請など、義塾が一丸となって考えなければならない問題にも直面した。
節電については「不便をかけた」とした上で、「皆さんが協力してくれてとても感謝しています」という言葉を送った。また義塾一丸となって節電に取り組めたことで、義塾が積極的に取り組む環境への対応も進んだと意義づける。
秋入学の導入については、5月に弊紙の取材に回答した「学生にとって何が一番良いか」という視点で考える姿勢を貫くとした。現在慶應義塾では、学部長らをメンバーとした懇談会、またRU11および一橋大学の12大学で構成する懇談会で検討を進めているという。
そして、今年散見されたのが飲酒事故をはじめとする塾生の不祥事。飲酒事故が起きた団体には解散が命じられたが、「罰するということが目的ではなく、そういう事故が二度と起きてほしくない」という思いから厳しく対処したとのこと。「今後はそのような飲酒事故は絶対にあってはならない」と、神妙な面持ちで語った。とはしながらも、義塾は塾生を信頼し、先月の三田祭では酒類の提供を許可したという。
2013年については、引き続き、慶應義塾の責務である教育・研究・医療などの社会活動の質の向上といった「地道な前進」に努めていくとした。具体的には、今年から始まったリーディング大学院などの新しいプログラムを軌道に乗せることや、慶應義塾大学病院の新病院棟の建設などがある。
最後に、福澤先生の「学者は国の奴雁なり」という教えを引き、「我々が慶應義塾の『奴雁』でなければならない」と語った。奴雁とは雁の群れが一心に餌をついばんでいるときに、一羽だけ首を高くして四方を見渡し、難に備える役目を担う雁のこと。目先の利害だけではなく、長期の利害得失を考えて行動する奴雁の役割を、塾に対して担っていくという。「一番大切なのは、今勉強している皆さんが学校を卒業して、社会人になった後に、『ああ、やっぱり慶應で勉強してよかったな』と思ってくれるような学塾にしていくこと」。また、後世の塾生のためになる政策を地味でも着実に実施することが大切だと語った。
清家塾長の任期が最終年となる2013年。義塾と塾生・塾員が一体となっての、さらなる義塾の発展に期待したい。

(池田尚美)