自由な雰囲気で行われるゼミ

新しい研究に触れる機会も

 

慶大の文系学部全体で約200あるというゼミ。その数は、教授の留学や定年退職で空いた席を、新しい教授を迎えゼミを設立することで一定に保たれている。いわゆる「新規ゼミ」が毎年設立されるのはそのためだ。設立は教授会で決定される。全塾ゼミナール委員会の太江田智之さん(政3)は、新規ゼミは比較的新しい研究を行うことが多いので、最新の研究に触れる機会が多くなるという点を魅力に挙げた。

新規ゼミの実態はどのようなものなのだろうか。2つのゼミに取材した。

まずは、昨年度設置された文学部の近森研究会。2期の3年生は、ゼミを築いていく気概にあふれている。「今年は昨年よりも街づくりコンテストへの参加希望者が多く、ゼミへのコミットメントの強さを表しています。これは先生も含め皆が一丸となる良い機会」とゼミ代表の大村菜奈さん (文3)は期待する。新規ゼミでの出来事は初めてのことばかり。「あまり構えすぎると、一期生、二期生にとって大きなプレッシャーになる」と大村さん。高橋慶光さん(文3)は、「後の代も従う流れを下手に作りたくない。各代のやりたいことを最優先に探してほしい」と語った。

続いて今年度に新設された経済学部の別所研究会。外ゼミ代表の久保貴史さん(経3)と内ゼミ代表の宇佐美嘉彬さん(経3)は、ゼミを運営する上での決定権が3年生にある点が新規ゼミを選んだ動機の一つだという。先輩がいないため上から縛られることがないので、3年生主導で希望通りに意思決定ができる、と積極的に新規ゼミを選んだ。

今年からゼミが始まり、半年が過ぎたいま。「まだ軌道に乗れていない段階。あまり広い活動に手を出さず、まず基盤を固めたい」と久保さんは語る。「1期生の役目は今後増えるゼミ生を強いきずなでまとめることだ」と、宇佐見さんは初代ならではの責任の大きさにも触れた。

ゼミに求めるもの見つめ直して

気になる「先輩の存在の大きさ」だが、両ゼミともデメリットの存在は認める。「OB・OGが少ないことで新規ゼミに対して不安があることは否めない。しかし、ゼミの活動を就活に生かすことは自分次第でいくらでもできる」と近森ゼミの大村さん。別所ゼミの宇佐見さんは、「普通のゼミは4年生が3年生の勉強の面倒を見るが、うちでは教えてくれる人はいない」と話した。新規ゼミは運営における自由度は高いが、ノウハウが分からない分ゼミ員の自主性が求められる。就職活動やゼミとの関わり方を自分がどうとらえるか、入ゼミの前に見直す必要があるだろう。

終わりに、現2年生へのコメントをいただいた。ゼミ選びの段階では、雰囲気を重視した方が良いと両ゼミで意見が一致。別所ゼミの宇佐美さんによれば、先生の人柄がゼミ全体の雰囲気になるという。「就職先や人気度ではなく、先生との相性を見極めるべき。雰囲気が楽しいゼミこそやりがいがある」。ゼミ決定において、先輩の存在や就活なども気になるところだが、重要なのは「雰囲気」を選ぶことのようだ。自分に合った雰囲気の中、自主性を持った仲間と共に学問をし、自ら旗振りとなってゼミを作っていくことにやりがいを見いだせる積極的な2年生は、ぜひ新規ゼミに挑戦してみてほしい。