野球には、小さなチームが強豪をなぎ倒し、優勝するという王道ストーリーがある。慶應野球サークル界にもそんな革命が起こった。今回取り上げるDrop Outers、(ディーズ)がその革命の旗手である。1981年以来、塾内トーナメントと呼ばれる慶應 No.1の野球サークルを決める大会が慶應内で開催されてきた。
この大会で優勝すると慶應代表として、関東大会への切符を得ることができる。そのため、毎年20チームほどが凌ぎを削りこの大会のために1年間戦略を練り、汗を流すという。
しかし、開催から現在に至るまでSFCのサークルが優勝したことは1度もなかった。日吉はSFCに比べ、圧倒的な母体数を誇り、戦力に大きな差があったのだ。SFCが塾内大会を制覇するのは不可能とまで言われていた。しかし、チーム全員がSFC生で構成されたディーズが、今その歴史を大きく変えた。塾内5連覇中の関東でも名の通ったサークル、フィリーズを準決勝で2対0で下し、決勝にコマを進め、優勝を果たしたのだ。快挙を成し遂げたディーズだが、初めから順風満帆なサークル運営ができていたというわけではなかった。ディーズはある程度野球経験のある人が入るサークルだが、SFCでの部員数はかなり少なく、毎年少数でのチーム編成を強いられている。
そして一昨年度、昨年度の入部者は、ほぼゼロに近い数字。昨年は他のSFCのサークルからも「来年ディーズは終わる。来年なら倒せる」と言われるほど、サークル運営そのものが危機に瀕していた。
昨年度の塾内大会では準決勝でフィリーズとあたり、0対15の大敗で終わり苦渋を味わった。しかし今年、転機が訪れる。代表である角井宏行さん(総2)の捨て身の新歓により、剛腕エース竹俣惟人さん(環1)をはじめ、粒ぞろいの選手が次々に入ってきたのだ。それから、ディーズはめきめきと実力をつけ、数々の強豪をなぎ倒し、社会人の草野球チームを含むストロングリーグ全国ランキングでは、一時は53位まで上るまでになった。そして、ダークホースとして草野球界で恐れられるチームに半年近くで上りつめた。
代表の角井さんは「今回の結果は、軟式野球をみんなでつきつめて考え、それを練習に活かして取り組んだ結果です。今後は、慶應一からの挑戦ということで、来期の連覇と、関東大会優勝を視野にいれ、記録を伸ばしていきますよ」と意気込む。大きな力が小さな力を飲み込むことは日常生活でも、野球界でも多々あるが、慶應で、小さなチームが大きなチームを倒すという風が吹いたと聞くと、慶應での競争を感じる。今後も慶應野球の新風としてディーズに慶應球界を盛り上げてもらいたい。
(遠藤和希)