大学生の学びに必要不可欠な図書館。慶大内に設置された大学図書館は今日、塾生の学びをサポートする重要な施設となっている。
慶大では各キャンパスに大学図書館があり、日々多くの塾生に利用されている。そのうち塾生がその存在を知っているのはいくつあるだろうか。慶大の各キャンパス合わせて約10もの図書館が存在する一方で、まだまだその実態を知られていない図書館もあるだろう。
そこで今回は数ある図書館のうち、塾生がアクセスしやすく、より上手く活用できる図書館を三田メディアセンターの木下和彦さんに紹介していただいた。
三田キャンパス内では趣きあるゴシック建築の「図書館旧館」。創立50年記念として建てられ、慶大を象徴する外観を誇る。旧館は地下2階から地上5階まであり、比較的古い書物とされる旧分類図書を筆頭に、英・仏・独の洋書、和装本、慶大の修士・博士論文などを主に所蔵している。荘厳な外観とは相いれず、入り口は建物の左横側面の小さな扉と少々分かりにくいが、ひっそりとした入口が隠れ家のような雰囲気を醸し出し、味わい深い。
古びた階段を上った3階にはメインカウンターがあり、入館前に必ずロッカーに手荷物を預けるシステムを採っている。穴場は円形のブースでゆったりと好みの視聴覚資料を楽しめるAVコーナー。遠山音楽財団から寄贈された楽譜やレコードなど貴重な資料も所蔵されている。また、世界の国々や日本の各県の詳細な地図が閲覧できる地図室があり、さらに現在慶大の教授が授業内で指定する文献「リザーブブック」も保管しているため、塾生の多様なニーズを満たすことができる図書館となっている。
当初この図書館は「閉架式」という、学生が読みたい本を司書に伝えて取り出してもらう仕組みだった。木下さんは、「昔は現在使用している書架のスペースは書庫で、利用者は立ち入ることができませんでした。閲覧目的につくられていないため、天井は低く、通路はかなり狭く迷路のようにです。職員でも着任したての頃は、まれに迷うことがあるんですよ」と話す。塾生が「メディア」と称す図書館とは異なり、ひっそりとした雰囲気の中で歴史ある書物に触れることができるのが、図書館旧館である。
三田にあるもうひとつの図書館、南館新設に伴い建てられた「南館図書室」もぜひ塾生に勧めたい。南館内には法務研究科があるため、この図書室は法律関係の図書を多く所蔵している。入館者の約7割が法務研究科生だが、地下2階からの吹き抜けと各階を眺望できる開放的な閲覧室があるため、学部生の自習なども大いにはかどるだろう。一見するとこぢんまりとした図書館だが所蔵冊数は約27万冊。記念論文集やリザーブブック、法曹関係の雑誌が並ぶ。特徴的なのは、地下4階にある社史の並ぶ本棚だ。一般企業の数十年の歴史がつづられた本は珍しく、就活などにも役立てられるのではないだろうか。
一方、東急東横線白楽駅から徒歩15分。ここにも慶大の大学図書館が存在するのをご存じだろうか。意外と知られていないのが、「白楽サテライトライブラリー」だ。ここは「図書館」というよりも「書庫」といった風情がある。実際に、閲覧コーナーはあるものの席は12席のみで、4階建ての建物の一部を借りた書庫になっている。フロアに広がるのは、数多くの書物が並んだ棚の通路。ここでは、各キャンパスの図書館に所蔵しきれなかった図書を保管しており、必要に応じて塾生は各キャンパスから白楽にある図書を取り寄せることもできる。
一般に入館できるのは3階のみで、要望があれば職員に伝えて図書を出納してもらう。図書を借りることも可能だ。1日の利用者は数名と少ないが、その分自分のペースでゆっくりと本を吟味することができる。また、各キャンパスから送られてきたさまざまな分野の書物が所蔵されているため、学びの深遠を体感できる多様な本と出会える可能性もあるだろう。
慶大の全図書館の所有する図書の総数は、実に450万冊。この膨大な知の宝庫のうち、私たちは在学中にどれくらいの書物を手に取ることができるのだろうか。
大学での学びは、享受するものではなく、自ら疑問を呈し、答えを探求しなければならない。ぜひとも塾生であるうちに、大学図書館を有効に利用して多くの本と出会い、学びの質を高めたい。
(清水咲菜)