日吉キャンパスでの一般教養科目、通称「般教」と聞くと、大教室で教授の講義を受ける、いわゆる座学の様子を思い浮かべる人が多いだろう。しかし「少人数セミナー」という授業では、さまざまな学部から集まった少人数の学生らが、活発な議論やプレゼンを繰り広げている。

講義ごとの特色あふれる内容も、大きな魅力のひとつだ。その一つとして、昨年度から開講され、独特な授業名で注目を集めた「着物をつくろう」という授業がある。この授業を担当する商学部の原大地教授に、少人数セミナーの魅力について話を聞いた。

慶大商学部 原大地教授

授業内容は、講義の名前からも分かるように、春学期で反物から浴衣を各自で完成させ、秋学期ではその経験を基に衣服に関する論文を書くといった、他の授業では経験できないようなものである。

原教授は、このセミナーを始めた理由についてこのように語った。「昔の日本で主流だった着物文化を、洋服を着ている私たちが手に触れて実感することは難しい。だから、実際にやってみた方が早いと考えた」

教授の話を聞いたり、文献をあたって答えを見つけたりするのではなく、まず自らの手を動かして着物という日本文化を少しずつ感じとることが、このセミナーの醍醐味であるようだ。

少人数セミナーは「少人数」であるため、受講するにあたって定員が設定される場合が多い。昨年度、この授業の倍率は2倍ほどであった。受講してほしい生徒像について、「技術を学んでほしい授業ではないので手先の器用さとかは関係ないかな」と前置きしたうえで、「やっぱり、やる気がある人がいいですね」と語った。

最後に、学生同士のみならず、教授と学生が話す機会が多くあることは、少人数セミナーの大きな意義であると原教授は指摘した。「教授がどんな研究をしているのかなど、普段は聞けないようなことを肌で感じられるというのが少人数セミナーの魅力だろう」

 

慶大には多くの学生が在籍しているため、普段の授業は「教授から学生への一方的な知識の受け渡し」がほとんどである。一方少人数セミナーは、教授から学生へ、学生から学生へ、そして学生から教授へといった多方向な関係性が生まれる。

その結果、学生たちは単なる詰め込みの知識ではなく、幅広い人間関係の中で答えを見つけ出す経験を得られる。そして、それは忘れられない記憶として学生たちの人生に残り続けるのだろう。
(仮屋利彩)