漫画やアニメを作者・出版者に無断で掲載し、利用者を拡大させている海賊版サイトについて、今年4月、政府は、知的財産戦略本部・犯罪対策閣僚会議で、海賊版サイトの閲覧を強制遮断する処分に法的根拠を与え、民間業者の対応を促すことを決めた。
今回の政府の決定は、果たして法的に妥当なものなのか。刑法を専門とする、慶大法学部の亀井源太郎教授に話を聞いた。
被害を食い止めるために、政府はサイトへの接続をプロバイダーに遮断させる「ブロッキング」に正当性を与えた。この技術的な前提として、ユーザーがどこのサイトに接続しようとしているか(海賊版サイトの利用者以外の一般の利用者も含む)について、各プロバイダーが把握することが不可欠となる。
この行為が、憲法で規定されている「通信の秘密」の権利侵害に当たるとされ、電気通信事業法上において違法であると亀井教授は話す。
政府は、ブロッキング自体は違法行為に当たるものの、緊急性の高い危難を除去する場合は犯罪が成立しないという「緊急避難」の観点から、正当性があるという方針を示している。しかし、著作権法が、通信の秘密を侵してまで保護に値するとは言えず、ブロッキングに関して緊急避難の要件を満たす解釈はできないというのが、一般的な考え方であるようだ。
亀井教授は、「立法なしにブロッキングをすることはおよそ許されない」という考えは、専門家の立場の違いを超えて一致しているとする。その一方で、政府も専門家も、海賊版サイトを根絶すべきだと共有していることを忘れてはならないと指摘した。
「海賊版サイトの横行は、日本の出版文化、そしてそれをなりわいとしている人々にとって命脈を握るような問題であるということはよく認識すべきです」。亀井教授はこのように述べた上で、今回の政府の方針について次のようにまとめた。
「目的が正しければどんなやり方をしてもいい、ということではなく、対応は迅速になされるべきですが、だからと言っても色々な問題を飛ばしていいわけではない、ということも併せて指摘したいなと思います」
(品野未羽)