昨年、宇多田ヒカルさんが約8年ぶりのフルアルバムをリリースし、本格復帰を果たした。そのアルバムに収録されている楽曲、『忘却featuring KOHH』のミュージックビデオ監督に、塾員である山田健人氏が抜擢された。山田氏は、2年前に慶大法学部を卒業したばかりの弱冠24歳だ。映像業界の第一線で躍進を遂げる山田氏に、映像作家になるまでの道のりや今後の展望について話を聞いた。
山田氏は、「映像は作り手の人間性が反映されるものであり、その人間性は多くの経験によって培われる」と考える。山田氏が手掛ける映像作品が世間を魅了している背景には、これまでの多様な経験があるようだ。
山田氏のクリエイティブな思考力は中学生の頃から鍛えられている。慶應義塾中等部在学中には、ゲームアプリの開発に没頭した。自身が制作したアプリを友人らに配布し、改良を重ねることで技術を高めた。その実力は、アプリのダウンロード数で集計されるランキングにおいて、日本で20位になるほどだ。慶應義塾高校に進学後は、アメフト部に所属した。週に一度しか休みがないという厳しい練習をこなす一方で、音楽に癒しを求めるようになった山田氏は、「優れた音楽は良い音質で聞きたい」という思いから、アンプの制作を始めた。そのような発想と行動力には圧倒される。
この頃、友人に音楽祭での映像制作を頼まれたことがきっかけで、独学で映像制作を勉強した。しかしながら、あくまで趣味。慶大進学後もアメフト部で忙しい日々を過ごしていた山田氏が映像制作を本格的に行うようになったのは、慶大卒業後である。
現在はフリーランスの映像作家として活躍する。塾生時代から繋がりのある同世代のクリエイターと作品を手掛けることもある。ブレイク中のバンド「Suchmos(サチモス)」もその一人で、コマーシャルに起用されたことにより話題になった『STAY TUNE』のミュージックビデオ監督を務めたのは山田氏である。『STAY TUNE』のミュージックビデオは、動画サイトYouTubeで1900万回以上も再生されているから驚きである。山田氏の最新作で、先月15日に公開された『PINKVIBES』(Suchmos)のミュージックビデオにも関心が集まっている。
これまで、映像作家として幅広いジャンルの映像を制作してきた。今後の展望を尋ねると、「自分の人間性を一番伝えることができるのは映画だと思います。観る人の想像力を刺激する映画を制作したいです」と、新たな挑戦を語ってくれた。
最後に、新入生に向けてメッセージを頂いた。「やりたいことをやる。自分がどうなりたいかを常に考えることを大切にして欲しいです」
これまでに積み重ねた経験が現在の仕事に繋がっている。山田氏の今後の活躍から目が離せない。
(鵜戸真菜子)
【山田健人さんプロフィール】
山田健人 (映像作家/VJ)
1992生まれ。東京都出身。独学で映像を学び、現象学的な考え方を軸にした制作を行う。
2015年よりフリーランスとして活動。yahyelのメンバーとしてVJも務め、ヨーロッパツアーの他、FUJI ROCK FESTIVAL等のフェスに出演。
通称、dutch_tokyo
http://kentoyamada.com